【実務対応】「投資一任契約」と「助言契約」の違いとは?~金融商品取引業の区分整理~
投資家からの依頼に基づき、金融商品の売買に関するサービスを提供する場合、
その業務が「投資一任契約」に該当するのか、「投資助言契約」にとどまるのかを誤認すると、無登録営業となるリスクがあります。
本稿では、金融商品取引法に基づく「投資一任」と「助言」の法的区分と、その実務的見分け方について、制度に確定した範囲で解説します。
■ 結論:投資一任契約は、売買の「実行権限」があるかどうかで分かれる
区分 | 意味 | 金融商品取引業の種別 | 登録要否 |
---|---|---|---|
投資助言契約 | 顧客に投資判断の助言のみを行い、売買執行は顧客が行う | 第2種金融商品取引業(助言業) | 登録必要(助言業) |
投資一任契約 | 顧客の包括的委任により、運用判断+売買執行を行う | 投資運用業(第1種業に該当) | 登録必要(投資運用業) |
ポイント:売買執行権限の有無が分水嶺
■ 金融商品取引法の定義(制度上の根拠)
- 投資一任契約(金融商品取引法2条8項11号)
「投資判断の全部または一部を他人に一任し、有価証券の売買等をさせることを内容とする契約」 - 投資助言契約(同法2条8項11号ロ)
「特定の有価証券等に関する価値等について、顧客に助言を行う契約」
■ 実務上の見分け方(契約書の記載例)
◯ 投資助言契約の例
「当社は、特定の銘柄に関する投資判断について助言を提供するが、最終的な売買判断および実行はお客様ご自身が行うものとします。」
✕ 投資一任契約に該当するおそれがある記載例
「当社が適切と判断した場合には、顧客に代わって証券の売買を実施します。」
→ 上記のような記載があると、助言業ではなく運用業(投資一任)に該当する可能性が高まります。
■ 実務上の注意点:グレーゾーンに注意
以下のようなケースは、形式は「助言」でも実質は「一任」と評価されるおそれがあるため要注意です。
ケース | 法的評価リスク |
---|---|
LINEなどで「この銘柄、今すぐ買っておいて」と断定的助言 | 助言業登録が必要 |
顧客のログイン情報で勝手に売買執行 | 無登録運用業に該当のおそれ |
「提携先業者」に自動売買の指示を連携 | 実質的な一任型と評価される可能性あり |
■ まとめ:契約内容と運用実態の両面からチェックを
- 「助言か一任か」は、契約書の文言だけでなく、運用実態から判断される
- 一任型は「第1種業」、助言型は「第2種業」として、求められる登録・監督義務も異なる
- グレーゾーンの運用を避け、明確なスキーム設計と適正な登録を行うことが必要
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