【誤認に注意】共同保有とみなされる関係とは?大量保有報告書での判断基準を整理
大量保有報告制度では、5%超の株券等を保有する者に対して報告義務が課されますが、その際、他人の保有分も「共同保有」と判断されると合算対象となる点に注意が必要です。
実務では「形式的には別名義でも、実質的に共同保有とされるか否か」の判断が非常に重要かつ難解です。本コラムでは、金融庁のガイドラインに基づき、共同保有に該当するか否かの判断ポイントと誤認しやすいケースを整理します。
■ 結論:形式よりも「実質的な意思統一関係」があるかが重要
判断基準 | 内容 |
---|---|
実質的判断 | 共同して株券等を取得・保有・売買する意思の合致があるか |
名義の有無 | 名義の一致は要件ではない(別名義でも該当することがある) |
契約書の存在 | 書面契約の有無は判断要素の一つにすぎない |
■ 共同保有と判断される典型的な関係(例)
関係性 | 共同保有該当性 | 根拠・理由 |
---|---|---|
親子会社間での持株会社による取得 | 該当する | 親会社の指揮命令下で取得されている場合など |
投資一任契約の委任者と受任者 | 原則該当しない | 単なる受託・裁量投資関係にとどまる場合 |
株主間契約に基づく取得・保有 | 該当する | 売買の方針などを協議し合意している場合 |
取締役とその支配する法人 | 実態により判断 | 株主権の行使を実質的に支配している場合など |
■ 誤認しやすい注意事例
- ファンドマネージャーとその顧客との関係
- 投資顧問業者とクライアントは、原則として共同保有に該当しない。
- ただし、特定の銘柄の取得・売却について実質的に意思統一がある場合は、該当する可能性あり。
- 親族間での保有
- 単に血縁があるというだけでは該当しないが、保有目的の共有や売買方針の一致があれば共同保有とされるおそれあり。
- 同一代表者を持つ複数法人の保有
- 名義上は別法人でも、実質的に意思決定を同一人物が行っている場合は合算対象とされる可能性。
■ 実務上の対応ポイント
- 契約関係だけでなく、実際の売買意思や方針協議の実態が問われる
- EDINET提出時の「共同保有関係の有無」について、誤認・過小申告があると課徴金のリスク
- 実務で不明な場合は、金融庁や外部専門家に事前相談するのが安全策
■ まとめ
共同保有の判断は、形式的な関係ではなく実質的な意思の統一性に着目されます。
名義の違いや契約の有無では判断できないため、取引の実態を丁寧に整理し、報告書上で正確に記載することが重要です。
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