匿名組合出資は譲渡できる?GKTKスキームにおける譲渡制限の実務とその理由
不動産や再生可能エネルギーなどのアセットを証券化するGKTKスキームでは、投資家は「匿名組合契約(TK契約)」を通じて出資を行います。
このとき、出資持分(TK持分)を第三者に譲渡できるかどうかは、契約設計と投資家管理において極めて重要な論点です。
本稿では、匿名組合出資の譲渡制限に関する実務上の取扱いと、その必要性の背景を解説します。
■ 匿名組合契約の持分とは?
GKTKスキームでは、投資家は営業者(合同会社)と匿名組合契約を締結し、出資を行います。
この出資により得られる「TK持分」は、株式や信託受益権と異なり、譲渡性・流通性のある有価証券ではなく、契約に基づく出資権利です。
そのため、法制度上は、譲渡に関して何らかの制限や管理が行われることが前提となっています。
■ 実務で「譲渡制限」が設けられる理由
匿名組合出資において譲渡制限が必ず設けられるのは、制度・実務上の明確な理由に基づいています。
1. 適格機関投資家等特例業務の人数制限を維持するため
GKTKスキームでは、適格機関投資家+49名以下の少人数の出資者による私募という制度的条件を満たすことで、第二種金融商品取引業の登録を不要とする「適格機関投資家等特例業務」が利用されます。
この際に出資持分の譲渡が自由であると、結果的に投資者数が49名を超え、制度要件を逸脱してしまうリスクが生じます。
2. 反社会的勢力等の排除やKYC・AML対応の一環
匿名組合出資者の選定は、信託銀行・アセットマネージャー・レンダー等の関係機関にとっても重要な審査対象です。
出資者が任意に交代してしまうと、事前の属性審査(KYC/AML)が無効になるおそれがあります。
3. スキームの安定性とレンダー側の信頼確保
多くのGKTKスキームでは、出資者構成を前提にローン契約やコベナンツが組まれます。
譲渡によって出資者が変動すると、レンダーとの契約関係に支障が生じるリスクがあるため、出資者の固定が望まれます。
■ 契約条項としての対応
このような実務上の理由から、匿名組合契約書には以下のような条項が設けられるのが一般的です。
「出資者は、営業者の事前かつ書面による同意を得ることなく、本契約に基づく地位またはそれに関連する一切の権利・義務について、第三者への譲渡・移転・担保提供等の処分を行ってはならないものとする。」
このように、TK出資者の地位は、契約上当然に譲渡可能とするのではなく、「事前承諾制」を通じて管理されるのが実務慣行です。
■ まとめ
匿名組合出資は、株式や信託受益権とは異なり、自由に譲渡・売買される性質のものではありません。
適格機関投資家等特例業務の制度要件や、スキームの安定性を担保するため、出資持分の譲渡には実務上必ず制限が設けられます。
契約書上も、営業者の事前承諾を条件とする条項を明記することで、制度的リスクを回避する必要があります。
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