変更報告書の提出義務とその要否判断の実務
【専門家が解説】変更報告書の提出義務とは?要否判断と提出期限の実務対応
大量保有報告書を提出した後、一定の変動が生じた場合には、「変更報告書」の提出が義務付けられています。
提出義務の有無やその判断基準、具体的な提出期限については、実務でも誤解が生じやすく、対応を誤ると課徴金の対象となることもあるため、正確な理解が必要です。
本コラムでは、変更報告書の提出義務を制度的に確定している条文・ガイドラインをもとに、実務上の判断ポイントを解説します。
■ 結論:5%ルール報告後の重要な変動には「変更報告書」の提出が必要
項目 | 内容 |
---|---|
提出対象者 | 既に大量保有報告書を提出した者 |
提出義務発生の条件 | 保有割合が1%以上変動/共同保有関係の重要な変更 |
提出期限 | 原則5営業日以内(報告義務発生日の翌日から起算) |
根拠条文 | 金融商品取引法第27条の25第2項、第27条の30 |
■ 提出義務が発生する典型事例
ケース | 提出要否 | コメント |
---|---|---|
保有割合が6.0%→7.2%に増加 | 要 | 1%以上の変動 |
株式の譲渡により6.5%→5.8%に減少 | 要 | 1%以上の変動 |
親会社から子会社への名義変更(実質同一支配) | 原則不要 | 実質的支配が変わらなければ不要 |
共同保有関係の解消(契約解除等) | 要 | 重要な共同保有関係の変更 |
■ 「重要な変更」の判断基準(共同保有関係)
金融庁のガイドラインや事務ガイダンスでは、以下のような変更を「重要な変更」としています
- 共同保有契約の締結または解除
- 共同保有の趣旨を変更する覚書の締結
- 株券等の取得・処分の決定主体の変更
- 共同保有者間の議決権行使方針の変更
上記に該当する場合には、株数の変動がなかったとしても変更報告書の提出が必要です。
■ 実務上の注意点
- 提出期限(5営業日)は土日祝を除いたカウントで、誤解しやすいため注意
- 1%未満の変動であっても、共同保有の解消等があれば要提出
- 提出漏れ・遅延は金融庁の調査対象となり、課徴金処分のリスクがある
- EDINETによる電子提出が原則(書面提出は不可原則)
■ まとめ
変更報告書の提出義務は、株式保有の変動だけでなく、共同保有関係の実質的な変化も対象となることが重要なポイントです。
形式上の名義変更や契約書の内容変更がある場合には、形式だけでなく実質に即して慎重に判断する必要があります。
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