大量保有報告書の「保有目的」はどう書くべきか?誤記によるリスクと実務上の判断基準
大量保有報告書において、「保有目的」は単なる形式的な記載ではなく、金融商品取引法上、虚偽記載が問われる可能性がある重要項目です。
特に、株主提案や経営関与の意図がある場合とそうでない場合では、報告書の内容に大きな差が生じるため、実務においても判断に迷うケースが多く見受けられます。
保有目的の記載区分(報告書記載例)
金融庁の記載要領等に基づく代表的な保有目的の例は以下のとおりです。
保有目的 | 内容例 |
---|---|
純投資目的 | 配当や値上がり益の獲得を目的とし、発行会社の経営に影響を与える意図がない |
経営関与目的 | 取締役選任・定款変更等の株主提案を行う意図がある/議決権行使を通じて影響力を行使する予定 |
業務提携・資本提携 | 発行会社との協業や業務連携に向けた株式取得(将来的な経営関与の可能性あり) |
子会社化・再編目的 | TOB・MBOなどを視野に入れた持株比率の取得・維持 |
実務でありがちな誤り・リスク
誤り①:「純投資」としながら経営提案している
→ 実際に株主提案(議決権行使、株主総会での意見陳述等)をしている場合は、「経営関与目的」と記載すべきです。
→ 記載と実態が食い違うと、虚偽記載による課徴金対象(600万円または利得相当額)となる可能性があります。
誤り②:目的変更後に変更報告書を提出していない
→ たとえば、保有当初は純投資目的だったが、後に発行会社と提携協議を開始したようなケースでは、目的の変更に該当するため変更報告書が必要です。
実務判断の基準は「事実ベース」
保有目的は「書類上の名目」ではなく、「実際の意図と行動」によって評価されます。
たとえば、次のような行為があれば「経営関与」と判断される可能性があります。
- 経営陣への書面での意見提示・要請
- 株主総会における取締役の選任提案
- IR担当者との戦略的対話の継続
- 株式を一定比率以上保有し、他の株主と連携して議決権行使を企図している場合
保有目的記載における実務チェックポイント
- □ 株式取得時の意図を社内で文書化しているか?
- □ 経営関与または協議を示すメール・契約書が存在しないか?
- □ 保有後に行動内容(対話、提案等)が変化していないか?
- □ 提出済報告書と実態が食い違っていないか?
まとめ
「保有目的」は、当局のチェック対象となりやすい項目です。
特に近年、アクティビスト投資家やM&A案件での調査強化が進んでおり、記載内容に齟齬がある場合、迅速に是正対応を取らないと法的・ レピュテーションリスクが拡大します。
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