自動売買ツール(EA)の販売は登録が必要?投資助言・代理業との関係を解説
自動売買ソフト(いわゆるEA)を販売したいが、投資助言・代理業の登録は必要か?
これは、情報商材・トレードシステムを提供する事業者から非常によく寄せられる相談です。
実はこの問題、ソフトの構成や販売方法、サポート内容によって結論がまったく異なります。今回は、金融庁の監督指針をベースに、登録要否を判断するための実務ポイントを詳しく解説します。
基本原則「助言の提供」があれば登録が必要
まず前提として、自動売買ソフトの販売が投資助言業務(11号業務)に該当するか否かは、主に以下の点で判断されます。
- ツールが投資判断を内包しているか
- ツール利用にあたり、販売者が継続的に助言やサポートを提供しているか
登録が必要とされるのは、「投資判断の提供」が事業として行われているケースです(金融商品取引法第2条第8項第11号)。
登録不要とされる代表例(監督指針より)
金融庁が示す「登録不要」なケースは以下のとおりです(※総合的な監督指針VII-3-1(2)②イ)
◉ スタンドアローン型のソフト販売
- 一般のダウンロード販売や店頭販売で
- サポートを受けずとも購入者が自己判断で利用可能
- 月額課金ではなく売り切り
→ このようなケースでは、投資助言業には該当しないとされています。
◉ テクニカルサポートのみの提供
- ログインの仕方や操作方法の説明のみ
→ 投資判断に関わらない範囲でのサポートは、基本的に問題なし
登録が必要とされるケース
以下のような場合は、投資助言業と判断される可能性が高まります
● 売買ポイントの具体的な指示・更新情報の提供
- ツールの中で、売買タイミングや銘柄が頻繁に更新される
- 開発元がアップデートや売買戦略の変更を都度配信
→ 投資判断の継続的提供とみなされ、助言業に該当
● 継続課金型の提供
- 月額や年額などのサブスクリプション方式
- 契約形態が役務提供契約と評価されやすい
→ 「随時購入可能な書籍等の例外」には該当せず、登録が必要
特に注意すべきパターン
◉ サーバー型の自動売買ツール
- クラウド上で稼働し、利用者の操作を要しない
- アカウント管理を事業者側が行っている
→ 実質的に一任型の運用と評価されるリスクがあり、投資運用業に該当するおそれも
◉ 外部委託やアフィリエイトとの併用
- 特定FX業者・海外バイナリー業者の口座開設を強く促す
- 成果報酬型アフィリエイト(IB契約)を組み合わせている
→ 金商法違反(無登録媒介行為)と評価されるケースが多く、非常にリスクが高い領域
登録が不要な場合でも油断は禁物
「売り切りなら登録不要」という解釈は条件付きの例外です。以下のような設計であれば、登録不要と評価される余地があります。
- ソフトにアルゴリズムが内蔵されており、開発者の関与なしに完結
- サポートが操作説明に限られている
- 購入にあたり会員登録や継続契約が不要
- 金融商品の特定の売買を助言しない
→ それでも、実際の広告や運用体制によっては、「実質的には助言業」と判断されるリスクはつきまといます。
まとめ:EA販売にこそ法的整理が必要
EAやシストレツールの販売は、極めてグレーな領域にあるビジネスです。
特に「有料かつ助言内容を含む情報提供」がセットになっている場合には、投資助言・代理業の登録が必要と判断される可能性が高くなります。
無登録での運用が発覚すれば、行政処分や業務停止命令の対象にもなり得ます。
事前にスキームの適法性を専門家と確認することが不可欠です。