増資の基礎知識

2024/03/19その他

増資の基礎知識

増資とは

 会社が資金を増やすための方法の一つです。これは主に、会社が新しい株式を市場に出して、投資家や他の関心を持つ人々からお金を集めるというものです。このようにして得た資金は、ビジネスの拡大や改善、新しいプロジェクトの開始などに使われます。

 具体的には、「有償増資」という方法が一般的です。これは、会社が新しい株式を発行して売り出し、それを買った人々から資金を得るという流れになります。ただし、新しい株式を作らないで資金を増やす「利益の資本組み入れ」という方法もあるので、その点も理解しておくといいでしょう。

 また、増資は基本的に株式会社で行われるものです。個人事業主は、この方法で資金を増やすことができません。さらに、合同会社での増資は、株式会社とは少し異なり、新しい株式を発行せずに資金を集めることが可能です。そして、出資を行ったすべての人に会社の意思決定に一定の権限が与えられることが特徴です。

増資の理由

 会社が資金を増やす「増資」にはいくつかの主な理由があります。

 まず、お金を集める必要があるときです。新しいプロジェクトを始めたり、ビジネスを大きくしたりするには、それなりの資金が必要です。増資を通じて、必要なお金を手に入れることができます。

 次に、会社の信頼を高めるためでもあります。資金が増えると、会社の安定性が高まり、お客様やパートナー企業からの信頼もアップします。

 また、良い関係を築きたい他の企業や人々とのネットワークを広げる手段としても使われます。増資を行うことで、新たなビジネスチャンスや協力の機会を掴むことができるかもしれません。

増資の種類

増資のアプローチは4つあり、それぞれが異なる目的とプロセスを持っています。

  • 第三者割当増資
     これは、会社が特定の個人や団体に直接新しい株式を販売する方法です。スタートアップ企業などがよく使い、エンジェル投資家や他のビジネスと協力して資金を集めます。手続きは、新株の条件を設定し、選ばれた第三者に通知。その後、株式を買いたい人から申し込みを受け付け、会社がその受け入れを決め、法的な手続きを完了させる、という流れです。
  • 公募増資
     上場企業が多くの投資家に向けて新しい株式をオファーする方法です。これにより、多くの人から資金を集め、株の流通も促進されます。プロセスは、増資に関する会社の決定、公募の条件の公表、投資家からの資金の受け取り、そして法的な手続きの完了、と進んでいきます。
  • 株主割当増資
     既存の株主に、その持ち株の割合に応じて新しい株式を提供する方法です。これにより、会社の支配構造の変更を避けつつ資金を調達できます。手続きは、新株の詳細を決定、株主に通知、申し込みと資金の受け取り、そして必要な法的手続きの完了というステップです。
  • 利益を組み入れる
     これは、会社の利益を再投資して資本金を増やす手法です。新しい株式を発行する必要がないので、他の増資方法とは異なるアプローチです。

増資の手続き

 増資を行うと、資本金と株式の総数が増えます。これらの変更は、法務局に報告して公式に記録を更新する必要があります。この報告を怠ると、罰金が科せられる可能性があるため、増資後は速やかに2週間以内に法務局に登記を行うことが必要です。

 増資の際の手続きは以下の通りです。

  1. 非公開会社であれば株主総会で、公開会社であれば取締役会で、新しい株式を発行する旨の特別決議を行います。
  2. 募集する株式の詳細な条件を設定し、それを株主や潜在的な投資家に通知します。
  3. 新しい株式の購入希望者からの申し込みを受け付け、資金を受け取ります。
  4. 出資の履行が完了したことを確認し、新しい株式を発行します。

 このプロセスが完了すると、次は法務局に登記を行います。それには、会社の決定の記録、新たな株主のリスト、資金受領の証明など、いくつかの書類の提出が必要です。

  加えて、増資の登記には登録免許税の支払いが必要です。税額は3万円、または増資額の1000分の7、このうち高い方の金額を納税する必要があります。特に大規模な増資を行う場合は、その分、登録免許税も増額されることを計画に含めておきましょう。

 これらの手続きをきちんと完了させることで、会社の資本が正式に増加し、新たなビジネスチャンスを掴む土壌が整います。

増資のメリット

増資にはいくつかの明確なメリットがあります。以下に、その主要なポイントをわかりやすく解説します。

  • 返済の必要がない
    増資で得られる資金は、ローンや借入れと違って、後で返さなければならないものではありません。金利や保証料の心配もなく、経営者は資金繰りのプレッシャーから解放され、ビジネスに集中できます。
  • 健全な財務
    増資を通じて外部から資金を集めることで、会社の財務が健全になり、安定します。これは、自己資本が増え、財務の健全性を示す指標が向上するからです。それにより、必要に応じて金融機関からの借り入れがスムーズになるかもしれません。
  • 信用の向上
    増資により資本金が増えると、その情報は会社の財務諸表にも反映されます。これが、会社の信用力を高め、新たなビジネスチャンスやパートナーシップの機会をもたらしてくれるでしょう。特に、大手企業からの出資を受けることができれば、その効果は一層大きくなります。
  • サポートネットワークの拡大
    増資を行うと、新たな株主が加わり、その結果、ビジネスのサポートネットワークが広がります。新しい株主は、会社のサービスや製品を積極的に推進し、価値あるコネクションや人材を紹介してくれる場合があります。

これらのメリットにより、増資は会社の成長を促進し、持続可能なビジネス展開をサポートする貴重な手段となるでしょう。

まとめ

  1. 資金調達と企業成長
    増資は、企業が新たな資金を調達する一助となり、それによって経営基盤を強化したり、ビジネスの拡大・進化を支える手段です。増資には返済義務や金利負担がないため、企業はこれらの負担に縛られることなく、資金を効果的に活用できます。
  2. 登記と手続き
    増資には、法的な手続きが伴います。企業は増資後の資本金増加や株式の変更を法務局に登記しなければならず、それに伴う一連の手続きと書類の準備が必要です。また、登録免許税の支払いも必要になり、その金額は増資額に応じて変わります。
  3. 企業価値の向上
    増資は、企業の財務体質を強化し、信用度を向上させる役割も果たします。これにより、企業は外部からの信頼を得やすくなり、ビジネスの展開や取引先との関係構築に有利に働くことが期待されます。さらに、新たな株主が加わることで、ビジネスネットワークやサポート体制が拡充される可能性もあります。

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