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            匿名組合とは

            匿名組合は、商法第535条に基づいて規定される組合形態です。これは、「一方が他方の営業のために出資を行い、その営業から得られる利益を分配することを約束することによって効力を生じる」という契約形態です。現在、多くの事業型ファンドが匿名組合形式で組成されています。

            匿名組合自体の契約に許認可は不要ですが、出資者を募集する場合には、原則として許可、登録、または届出等の何かしらのライセンスを必要とします。

            匿名組合の特徴

            匿名組合は、他の組合型ファンド(任意組合、投資事業有限責任組合(LPS)など)と比較して、以下のような特徴があります。

            1. 1対1の契約形式
              匿名組合契約は、営業者(事業を運営する主体)と匿名組合員(出資者)の間で結ばれる1対1の契約です。多数の出資者が関与する場合、それぞれが営業者と個別に契約を結ぶ形となります。これは、民法上の組合やLPSのように、多数当事者による単一契約とは異なりますが、実務上この違いが意識されることはあまりありません。
            2. 匿名性と責任の限定
              匿名組合の取引は営業者の名義で行われるため、取引相手に対して匿名組合員(出資者)の名前や責任が表に出ることはありません。匿名組合員は、出資額を超える損失を負うことはなく、対外的な責任を負わないのが特徴です。これが「匿名組合」と呼ばれる理由ですが、出資者の名前を公開することが法的に禁じられているわけではありません。
            3. 営業者の責任
              匿名組合の対外的な取引はすべて営業者の名義で行われます。営業者は取引先に対して責任を負いますが、匿名組合員はその責任を負いません。これにより、匿名組合員は一定のリスクを限定した形で出資が可能となります。

            匿名組合と他の組合型ファンドでは、取引の名義や責任の取り扱いが異なります。例えば、投資事業有限責任組合(LPS)は、無限責任組合員と有限責任組合員で構成され、それぞれの責任範囲が明確に分けられています。有限責任組合員は出資額を限度に責任を負い、損失が発生してもそれ以上の負債を負うことはありません。一方で、無限責任組合員は投資事業有限責任組合(LPS)の債務に対して無限責任を負い、通常、取引の名義も無限責任組合員が使用します。この仕組みにより、投資事業有限責任組合(LPS)では対外的な責任を負う組合員が存在する点が特徴です。

            これに対して、匿名組合では、営業活動における取引はすべて営業者の名義で行われます。出資者である匿名組合員は対外的な責任を一切負わず、損失が発生した場合でもリスクは出資額に限定されます。一方、取引全体の責任は営業者が負うため、匿名組合はリスクを抑えた出資手段として広く活用されています。

            実務上の注意点

            匿名組合の実務では、以下の点に留意が必要です。

            • 分別管理の義務
              金融商品取引業や適格機関投資家等特例業務に基づく匿名組合では、営業者名と分別管理が明確にわかる名義で口座を開設する必要があります(一般社団法人第二種金融商品取引業協会のガイドラインに基づく)。
            • 許認可や登録
              匿名組合を用いたファンド組成には、第二種金融商品取引業の登録や適格機関投資家等特例業務の届出が必要となる場合があります。

            匿名組合の活用例

            匿名組合は、有価証券やデリバティブ取引を出資対象事業としない事業型ファンドで幅広く利用されています。この形式は、個人投資家が原則として雑所得として総合課税され、株式等の分離課税が適用されないデメリットがあるものの、もともと分離課税が適用されない事業型ファンドには特に不利な点がないため、適した選択肢とされています。

            匿名組合は、出資者の責任や運営コストの面で他の組合型ファンドに比べて有利です。例えば、任意組合では出資者全員が無限責任を負い、投資事業有限責任組合(LPS)では法定監査が義務付けられるため、匿名組合のほうが運営がシンプルで、事務コストが低く抑えられることが特徴です。

            こうした特性から、匿名組合は再生可能エネルギーファンド、オルタナティブアセット(ワインや絵画など)、不動産証券化ファンドなど、多岐にわたる事業型ファンドで採用されています。

            不動産証券化と匿名組合の利用

            特に不動産証券化の分野では、匿名組合を活用した「倒産隔離スキーム」が広く用いられています。このスキームでは、合同会社を営業者として匿名組合契約を結び、さらにその合同会社の親会社を一般社団法人とする構造が一般的です。この手法は「GKTK」と呼ばれ、不動産証券化ファンドの代表的なモデルとなっています。

            一方で、不動産特定共同事業においては、匿名組合ではなく民法組合を採用するケースもあります。これは、民法組合形式を採用することで、投資家が不動産の共有者として権利を持つことが可能になるため、より直接的な所有関係を実現したい場合に選ばれることがあります。不動産特定共同事業の中でも共有持分拠出型のファンドでは、登記を伴う形で投資家の権利を確保するため、このスキームが選ばれることが多いです。

            組合型ファンドの法規制と匿名組合の注意点

            匿名組合を含む組合型ファンドの設立には、金融商品取引法の規制が適用される場合がほとんどです。具体的には、第二種金融商品取引業(7号または9号業務)の登録が必要となります。一部の例外として、要件を満たす共同事業や不動産特定共同事業許可に基づく組合などでは登録義務が除外される場合がありますが、こうしたケースは匿名組合では成立しにくいとされています。

            さらに、仮に100%親会社を含む関係者間での募集であっても、金融商品取引業に該当する可能性があるため注意が必要です。このため、匿名組合は基本的に何らかのファンド規制の対象になると考え、適切なライセンスの取得や規制対応を行うことが重要です。

            匿名組合をライセンスなしで組成することは可能か

            過去には、親子法人間での匿名組合契約や出資が、無登録で金融商品取引業に該当しないと解釈されて取引が実行された事例が見られました。しかし、現在の実務においてはリスクが高く、このような整理をまともな企業や法律事務所が採用することはありません。こうした解釈は、金融商品取引法施行以前の証券取引法時代の発想を引き継いだものといえますが、現行法では適用されません。

            証券取引法時代、匿名組合の自己募集が一定の条件下で業登録を不要としていた背景がありますが、過去に発生した複数の事件を契機に規制が強化され、匿名組合持分の取り扱いが金融商品取引法の業規制の対象となりました。その結果、匿名組合契約が無登録で実行可能とする解釈は現在では無理があるとされています。

            親子会社間や1対1契約での匿名組合契約について

            親子会社間や1対1の契約であれば、業としての要件を満たさないため無登録で匿名組合契約を締結できるのではないかと考える方がいらっしゃいますが、これは一般的には難しいとされています。不動産証券化の一部スキーム(ダブルTK)を除き、匿名組合を無登録で組成することはほぼ不可能です。

            金融商品取引法に基づく規制では、親子会社間であっても無登録での匿名組合契約は基本的に認められません。また、金融商品取引業の規制において「反復継続性がないため業ではない」という整理は実務上ほとんど通用しません。関連法規である貸金業法や宅建業法と同様に、厳格な解釈が求められます。

            無登録の匿名組合に対するリスク

            実務では、匿名組合を無登録で組成した事例が財務局の報告徴求命令の対象となり、適法性を問われたケースが複数存在します。こうしたケースでは、適法性を十分に説明できず、結果として無登録営業として警告を受ける事例も少なくありません。

            特に金融商品取引業の分野では、反復継続性や対公衆性が潜在的にある場合には、業要件を満たすかどうかを慎重に検討する必要があります。金融庁や財務局による審査は非常に厳格であり、貸付型ファンドや不動産ファンドのスキームでも登録なしで運用することは難しいのが現状です。

            事業投資を前提としたファンドの組成について

            匿名組合によるファンド組成の相談において、事業投資を行う場合、投資運用業は不要で、第二種金融商品取引業だけで対応できるのではないかというお問い合わせがよく寄せられます。しかし、「事業投資」という言葉自体は法令上の明確な定義がなく、資金を出資し、出資先が事業を営む場合でも、結果的に集団投資スキームに該当する可能性があります。

            特に、第三者が資金を再投資する場合、有価証券の取得や運用行為に該当するため、投資運用業の登録が必要になるリスクが高いと考えられます。

            適格機関投資家等特例業務の活用

            一方で、1名以上の適格機関投資家と49名以下の特例業務対象投資家を相手とする場合、適格機関投資家等特例業務として、第二種金融商品取引業や投資運用業の登録なしでファンドを運営することが可能です。この特例を活用することで、法的要件を満たしつつ効率的なファンド運営が可能となる場合があります。

            サービス内容

            匿名組合契約書の作成支援

            匿名組合の基本となる契約書の作成やレビューを行います。お客様の事業内容や目標に応じた最適な契約書をご提供し、法的リスクの軽減を図ります。

             スキーム設計

            匿名組合を利用したファンドのスキーム設計を支援します。不動産証券化の倒産隔離スキーム(GKTK)や、再生可能エネルギーファンドなど、さまざまな分野での最適なスキーム構築を提案します。

             税務・会計サポート

            匿名組合の運営に必要な会計処理や税務対応をサポートします。当社会計士・税理士チームが匿名組合特有のパススルー課税に対応した専門的な助言を提供します。

            よくある質問

            匿名組合の特徴は何ですか?

            匿名組合は営業者の名義で事業が行われ、出資者(匿名組合員)は対外的な責任を負いません。リスクが出資額に限定されるため、投資家にとってリスクの低い出資形態として知られています。

            匿名組合の契約には登録や許認可が必要ですか?

            匿名組合自体の契約には許認可は不要ですが、出資者を募集する場合には、ライセンスが必要となります。事業内容やスキームに応じて適切な対応が求められます。

            匿名組合の会計処理や税務対応はどのように行いますか?

            匿名組合では法人税が課されず、パススルー課税が適用されます。つまり、匿名組合の所得は出資者に分配され、各出資者が個別に申告・納税を行います。当社では、この会計処理や税務対応を会計士・税理士チームでサポートすることが可能です。

            不動産証券化ファンドで匿名組合がよく使われる理由は?

            匿名組合は出資者が対外的に責任を負わないため、リスクを限定できる点が不動産証券化ファンドに適しています。また、営業者の名義で取引が行われるため、倒産隔離スキーム(GKTK)との親和性が高いことも特徴です。

            匿名組合と投資事業有限責任組合(LPS)の違いは何ですか?

            匿名組合は営業者と出資者が1対1で契約を結ぶ形式で、出資者は対外的な責任を負いません。一方、LPSは無限責任組合員と有限責任組合員で構成され、無限責任組合員が対外的な責任を負います。匿名組合は主に事業型ファンドで、投資事業有限責任組合(LPS)は有価証券やデリバティブ取引を伴うファンドで採用されることが多いです。

            お問い合わせ

            匿名組合の設立や活用をご検討中のお客様は、ぜひ当社にご相談ください。専門的な知識と豊富な実績を持つチームが、お客様のニーズに合わせた最適なソリューションを提供します。

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