投資事業有限責任組合(LPS)の決算処理について、提出書類や監査費用の相場など解説【ファンド会計】

2022/11/28投資事業有限責任組合

投資事業有限責任組合(LPS)の決算処理について、提出書類や監査費用の相場など解説【ファンド会計】

投資事業有限責任組合(LPS)の決算処理について、提出書類や監査費用の相場など解説【ファンド会計】

投資事業有限責任組合(LPS)の会計

投資事業有限責任組合は、事業年度終了日から3か月以内に、貸借対照表、損益計算書及び業務報告書並びにこれらの附属明細書(財務諸表といいます)を作成する必要があります(投資事業有限責任組合契約に関する法律第8条)

LLPとLPSは会計書類の作成期間が異なる

なお有限責任事業組合の場合であると、財務諸表の作成は事業年度の終了から2か月となっていますが、投資事業有限責任組合はそれより長い3か月となっています。その理由は、有限責任事業組合は公認会計士による会計監査がないのに対して、投資事業有限責任組合では、(後述する)公認会計士による会計監査が必要となりその期間が必要なためと考えられます。

第八条 無限責任組合員は、毎事業年度経過後三月以内に、その事業年度の貸借対照表、損益計算書及び業務報告書並びにこれらの附属明細書(第三項において「財務諸表等」という。)を作成し、五年間主たる事務所に備えて置かなければならない。

投資事業有限責任組合契約に関する法律第8条

投資事業有限責任組合(LPS)は公認会計士の監査が必要

投資事業有限責任組合は、公認会計士の監査を受けなければなりません(投資事業有限責任組合契約に関する法律第8条2項)。

投資事業有限責任組合の会計は、「中小企業等投資事業有限責任組合会計規則(平成10年8月20日中小企業庁公示、10・08・07企庁第2号)」(以下「有責組合会計規則」という。)にしたがってなされるのは通常になります。

会計は投資を時価評価

有責組合会計規則では、「組合員として参加している投資家に対し組合の業務の状況を正確に開示するという情報開示の本来の目的からすれば、組合の資産は時価で評価すべき」(平成10年6月通商産業省「投資事業組合の運営方法に関する研究会報告書」)という考え方にしたがい、投資を時価評価することが必要となり(有責組合会計規則第7条第2項)、時価評価の方法は投資事業有限責任組合契約の条項によるとしています。(有責組合会計規則第7条第3項)

(投資)
第七条 投資は、株式、債券その他の資産の性質を示す適当な名称を付した科目に細分しなければならない。
2 投資は、時価を付さなければならない。ただし、時価が取得価額を上回る場合には、取得価額によることも妨げない。
3 前項の時価の評価方法は、組合契約に定めるところによる。

有責組合会計規則第7条

投資事業有限責任組合(LPS)の資産は「時価評価」が重要

投資事業有限責任組合の資産は有価証券等の「投資」がほとんどとなりますので、この時価評価が重要となります。

上場株式等であれば、日本証券取引所の市場価格を時価として取り扱って問題はないのですが、未上場の株式等市場価格が不明なものに関しては、その時価が何であるかは多くの議論があります。投資の時価評価についてが公認会計士と監査においておおきな論点になります。

投資事業有限責任組合(LPS)の監査費用の相場

なお投資事業有限責任組合の公認会計士の監査に関してはその組合財産の額や投資対象や取引量によって監査報酬は増減しますが、数十万円から100万円程度が一般的と思われます。

なお公認会計士の選定は決算時にすると時間がなく公認会計士が見つからない可能性がありますので、少なくとも決算時前に公認会計士と監査契約を締結しておく必要があると考えます。

分配があった場合は法定調書を作成する

また、投資事業有限責任組合で分配があった場合には、組合契約に定める計算期間の終了の日の属する年の翌年1月31日までに所轄税務署に「有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書(同合計表)」という法定調書を提出しなければなりません。

まとめ

投資事業有限責任組合(LPS)の会計処理のまとめは以下

  • 決算時には、貸借対照表及び損益計算書並びにこれらの附属明細書を3か月以内に作成する必要がある。
  • これらの財務諸表は公認会計士の監査が必要である。
  • 分配時には有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書(同合計表)を税務署に提出する必要がある。

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本日は投資事業有限責任組合(LPS)の会計について解説しました。

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