不動産信託受益権関連業務について

2023/09/06その他

不動産信託受益権関連業務について

不動産取引を主とする事業者が、信託受益権という形で不動産を売買、または仲介するには、特定の法律に基づく資格が必要です。これは一般的には、第二種金融商品取引業者という資格です。そのため、不動産業者がこの信託受益権に関連する業務を拡大するには、この新たな資格の取得が求められます。

仲介対象が信託受益権となると、これまでの不動産取引から一歩進んだ資格が求められるため、事業者にとってはハードルが上がると言えます。

加えて、信託受益権を扱う事業者の中には、他社が資産管理やプロジェクト管理を担当するような集団投資スキームの取引も行っている事業者もいます。このような業務もまた、不動産取引業の一部と見なすことができます。しかし、こちらも信託受益権として取り扱われるため、資格の取得が必要となります。

信託受益権

信託受益権とは、物件の持ち主がその所有権を信託会社や銀行に移し、これら機関が指示に従い物件を管理するシステムです。この際に発行される権利が信託受益権となり、保有者は物件から得られる収益を享受することができます。つまり、物件からの経済的恩恵を受け取ることが可能な権利と言えます。

信託受益権は元の物件所有者以外の第三者にも売買できます。この売買や仲介は、特定の資格(第二種金融商品取引業)を持つ者が行います。

物件が信託受益権化する場合、信託会社や銀行は建築や法令などの適合性を確認します。信託受益権化は、物件の売買に伴う税金を減らし、流動性を高めるメリットがあります。さらに、不動産の管理上の便宜も図ることができます。

また、信託受益権は、倒産隔離の観点からも利用されてきました。これは、大手投資家向けの不動産投資において重要な要素で、不動産投資信託(REIT)や特定目的会社と並び、信託受益権に投資する方式がよく用いられています。

不動産信託受益権型セキュリティトークン

最近では、不動産信託受益権をデジタル化した、いわゆる「セキュリティトークン」の発行が増えてきています。

この「セキュリティトークン」は、信託受益権の発行に関連する一種の電子証券と位置づけられています。その取り扱いには特別な金融商品取引業の資格が必要です。これまであまり注目されていなかったこの領域が、最近では急速に人気を集めています。特に、不動産を担保としたセキュリティトークンの発行が盛んになっています。例えば、三菱UFJ信託銀行が開発した特定のプラットフォームを通じて、初の不動産受益証券発行信託型セキュリティトークンが公開されました。

また、この種の電子証券の取扱業務は、一般的な金融商品取引業の資格に該当します。しかし、こういったデジタル化された取引に進出する事業者は主に大手金融機関や大手不動産会社、フィンテック企業などで、従来の小規模な信託受益権関連の事業者とは少し違う形態を取っています。

登録が不要な場合

新しく発行される信託受益権の取得や他社の信託受益権の取得については、特別な金融商品取引業の登録が必要ないことがあります。たとえば、自分で信託受益権を作り、それを直接顧客に売る行為や、他社が作った信託受益権を直接購入する行為は、登録が不要な場合があります。これは法律上、これらの行為は購入や販売とは異なり、募集や私募として扱われるためです。

ただし、不動産取引業者が自分で募集を行う場合には、購入者への重要事項の説明が法律で義務付けられています。

一方、銀行などが運用する信託受益権については、その発行者は銀行などになり、その初期の受益者の信託契約に基づく権利の取得を勧める取扱いは、募集または私募の取扱い業務に該当します。この業務は、主に登録された金融機関によってカバーされています。

また、金融商品取引業者に勧誘の全てを委託すれば、信託受益権の販売については、勧誘をせずに、金融商品取引業者による代理または仲介により契約を結ぶことは、金融商品取引業に該当しないとされています。

さらに、不動産信託受益権を取得する特定の投資組合に関しても、一部の登録義務が除外されています。これは、特定の投資行為について、特定の条件下で金融商品取引業から除外されているためです。

注意事項

信託受益権の取引は、いわゆる不動産ファンドとは別物であることを忘れないでください。同じく不動産を対象とするものでも、その構造や運用は異なります。信託受益権は投資家が物件の所有権を間接的に保有する形で、一方の不動産ファンドはアセットマネージャーが資産の管理や取引を行うため、戦略的な処分や組成の変更が可能です。

不動産ファンドの設立は法的な制限が多いため、不動産担保ローンの提供や社債化といった代替手段も存在します。しかし、そのような貸付型のファンドを取り扱う業者の登録は、審査が厳しく、大規模な企業や強力なスポンサーが後ろ盾のある者でなければ、参入は難しいと言われています。

さらに、不動産信託受益権を基にした投資組合やその取引は、その取り扱いや要件について一定の規定があるため、注意が必要です。特に、宅地建物取引業者がこれらの業務を行う場合、買主への重要事項の説明が法律で義務付けられています。

手続きのご相談・ご依頼

 当社は金融商品取引業務を中心に業務を提供しています。ファンドの組成・スキーム検討等についてのご相談は永田町リーガルアドバイザーまでお問い合わせください。