まず、会社設立手続きの前に会社の種類と用語の意味について簡単にまとめます。
投資会社:一言で言うと、金融商品や不動産などを活用して利益を追求する企業のことです。その一方で、「投資会社」は法律上定められた特定の会社形態を指すものではなく、多くの種類が存在します。主な形態には、投資ファンド、投資法人、持株会社などがあります。
投資ファンド:各種投資家から資金を集めて運用し、得られた利益を投資家へ配布するシステムです。多くの場合、投資信託や投資事業組合といった形で設立され、その運用は証券会社などが行います。
投資法人:法律に基づき設立され、投資家から集めた資金を運用します。ただし、直接の運用は法律で禁止されており、信託銀行などの投資信託委託業者を通じて行います。不動産投資信託(REIT)が一般的な例として挙げられます。
持株会社:は他社の株式を所有する企業で、自社の製造や販売活動を行わず、子会社からの配当によって収益を得ます。主な目的は他社の経営支配であり、その結果、事業リスクの分散やM&A戦略の実行などが可能になります。
これらの企業形態を通じて投資会社が一貫して行うのは「投資」です。その目的は主に収益の獲得で、個々の投資家が行う株式投資や不動産投資と同様です。ただし、個々の投資家が投資会社を設立するのは資金や規定のハードルが高いため、一般的には難しいと言えます。
なお、現在の法律では株式会社、合同会社、合名会社、合資会社という4つの企業形態を設立できます。株式会社と合同会社は出資者の責任が出資額で限定され、出資者は会社の債務を直接弁済する義務がない点が特徴です。一方、合名会社と合資会社は一部または全ての出資者が会社の債務全額を弁済しなければならない無限責任を負います。これら4つの会社形態のうち、設立が比較的容易で、出資者のリスクが限定される株式会社と合同会社が最も一般的です。 以上が「投資会社」の基本的な概要です。投資会社の形態や運用方法は様々ですが、その共通の目的は資産の運用による利益の追求です。
投資会社を設立する手順
株式会社を設立する場合
新たに投資会社を立ち上げる場合、大きく分けて5つのステップが必要です。この5つのステップには、株式会社の設立を前提とした定款の作成、その認証、出資金の払込み、必要な書類の準備、そして最終的な登記申請と届け出が含まれます。
- 最初のステップは、会社設立の基本要素を定めることです。これには会社名(株式会社という文字を含むことが必須です)、本社の所在地、設立資本金、業務の目的、設立者の名前、決算期間などが含まれます。特に投資会社の場合、業務目的には投資活動を明記することが必要です。
- 次に、定款の認証が必要です。公証役場で行うこの手続きには、定款のドラフトを3通と設立者の印鑑証明書が必要です。公証役場には事前にドラフトを送り、当日の手続きをスムーズに進めることが可能です。
- その後、出資金を振り込むことが求められます。この段階ではまだ会社が設立されていないため、設立者自身の名義で振込を行うことが必要です。また、株式として振り込むことも可能で、その場合は後日、株式の名義書き換え等の手続きを行う必要があります。
- 次に、法務局に提出するための書類を整えます。これには、会社設立の登記申請書、定款、設立者の同意書、設立時の役員の選出に関する証明書類、役員の印鑑証明書、役員の身分証明書のコピー、出資金の振込み証明書、そして司法書士等を代理人とする場合の委任状が含まれます。
- 最後に、必要な書類が揃ったら、本社所在地の法務局で登記申請を行います。この手続きは約2週間で完了し、その後、税務署や都道府県役場、市区町村役場などに設立届出書を提出します。これらの手続きが全て完了した時点で、新たな投資会社の設立は完了となります。
合同会社を設立する場合
合同会社の立ち上げは以下の手続きを順に行います。合同会社の設立は比較的シンプルで、時間もそれほどかかりません。
- まずは定款の作成を行います。合同会社を始めるための基本的な情報をまとめ、定款を作ります。社員(出資者)の名前や会社の名前、事業の目的、オフィスの場所、出資金の額、決算月などの基本事項を決めます。定款には、代表社員の選び方、利益の分配の方法など、合同会社特有の項目も記載します。ここで決めることで、将来のトラブルを避けることができます。
- 次に、出資金を払い込みます。合同会社を始める前には会社名義の銀行口座がないので、社員の個人口座にお金を振り込みます。社員が複数いる場合は、誰がいくら出資したかをきちんと記録しておきます。
- 出資金を支払ったら、会社を登録するための書類を準備します。書類には、定款や本社の場所、代表社員の名前などを書きます。また、出資金を振り込んだことを示す書類や、代表社員の就任に同意する書類も用意します。
- 最後に登記申請と行政機関への報告をします。書類が揃ったら、法務局に会社登録を申し込みます。登録が認められると、税務署や都道府県、市区町村に会社設立を報告します。
投資運用会社の組織形態
投資運用会社は、我々のお金をどう活用してより多くのリターンを得るかを考えるプロフェッショナル集団です。一言で言えば、彼らはお金を使ってさらにお金を生み出すための専門家です。投資運用会社の内部にはいくつかの重要な部署が存在します。それぞれが独自の役割を果たして、会社全体が円滑に運営されています。
- 投資部門(Portfolio Management)
投資戦略の立案、投資先の選定、ポートフォリオの構築と運用を行う部門です。
投資部門は会社の”頭脳”とも言える部門で、どのように投資するかを考える役割を持っています。彼らは何を、どの程度、いつ買い、そしていつ売るかを決定します。具体的には、株式、債券、外国通貨、貴金属、不動産など、様々な投資先を探し、分析し、それぞれの価値と将来性を評価します。
- リスク管理部門(Risk Management)
投資ポートフォリオのリスクを分析し、管理する部門です。
リスク管理部門の仕事は会社全体の投資リスクを見守ることです。投資はリターンを追求する一方で、リスクを伴う活動です。リスク管理部門は、市場の変動、借入先の信用状況、現金の出入りの流動性など、様々なリスクを評価し、投資リスクが適切に管理されていることを確認します。
- コンプライアンス部門
金融商品取引法や企業法、その他関連法規などを遵守し不正防止に努める部門です。
会社が法律を守る役割を果たします。金融市場は法律で厳しく規制されており、不適切な行動は重大な罰則をもたらします。コンプライアンス部門のスタッフは法律のエキスパートであり、不正行為やインサイダー取引の防止に努めます。
- 運用後勤部門(Operations)
投資運用に関連する事務的業務を行う部門です。
投資の「舞台裏」で働き、取引の手続き、清算、投資評価、報告書作成などを担当します。彼らの仕事は、縁の下の力持ちとして他の部署が効率的に働くためのサポートを提供することです。
- 営業部門/マーケティング部門
投資商品の販売、顧客対応等を行う部門です。
投資商品を売り、顧客との対話を通じて、会社の商品やサービスを提供します。また、新規顧客を開拓する役割もあります。
- 研究部門
市場の動向、マクロ経済の分析、個別銘柄の調査などを行い、投資部門を支援する部門です。
研究部門は主に市場の動きや経済状況を調査し、投資部門がより賢明な投資決定を下すための情報を提供します。
これらの部署が協力して働き、投資運用会社は成り立っています。会社の形態によっては、これらの部署の機能や役割が多少異なることもあります。たとえば、株式会社では取締役会が最終的な意思決定を行います。一方、合同会社では定款に記載された事項に基づき運営されます。また、公開されている会社では、一般の株主の意見も重要です。
それぞれの投資運用会社は、金融庁の許可が必要です。それには内部組織や運用体制が一定の基準を満たす必要があります。基準に適合しないと業務を行うことができません。これにより、投資者の利益が保護され、金融市場が公正かつ透明に運営されます。
まとめ
- 設立手続き: 投資運用会社の設立には、一連の手続きが必要です。その手続きには、事業計画の作成、必要な許可の取得、会社設立の登記などが含まれます。また、設立する企業の形態(例えば、合同会社や株式会社)によって手続きは若干異なります。
- 組織形態: 投資運用会社は、投資部門、リスク管理部門、コンプライアンス部門、運用後勤部門、営業部門、マーケティング部門、研究部門といった各部署から成り立っています。それぞれの部署は特定の役割を果たし、会社全体の運営に貢献します。
- 規制と監督: 投資運用会社は金融庁等の公的な監督下にあり、その設立と運営には許可が必要です。それにより投資者の利益が保護され、金融市場が公正かつ透明に運営されます。また、会社の運営は法律に準じて行われ、適切なコンプライアンスが求められます。
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