組合型ファンド(任意組合、匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合)の税務処理について:その2

2022/08/04任意組合

組合型ファンド(任意組合、匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合)の税務処理について:その2

組合型ファンド(任意組合、匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合)の税務処理について:その2

組合型ファンド

組合型ファンドとしては、任意組合、匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合等があります。

組合の法的性質

法人格

任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合は、法人格を有していません。
一方で匿名組合は、法人もしくは個人である営業者の事業に出資するわけで、その営業者は法人格を有することになります。そして税務上法人格の有無が重要になります。

法人税法上の納税義務者

法人税法上の納税義務者は法人税法で、内国法人等と規定されています(法人税法第4条)。
したがって、株式会社、合同会社等の会社は納税義務者となりますが、任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合は納税義務者にはなりません。

任意組合、LPS、LLPは納税義務者にならない

法人格を有さない、任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合は、法人税法条納税義務者にはならず、各組合員各々が納税することになります。

第四条 内国法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。ただし、公益法人等又は人格のない社団等については、収益事業を行う場合、法人課税信託の引受けを行う場合又は第八十四条第一項(退職年金等積立金の額の計算)に規定する退職年金業務等を行う場合に限る。
2 公共法人は、前項の規定にかかわらず、法人税を納める義務がない。
3 外国法人は、第百三十八条第一項(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得を有す

組合員に直接課税される(パススルー課税)

任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合は、組合に課税されることなく各組合員が納税義務者になります。従いまして任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合の事業で所得が生じると各組合員である、個人もしくは法人で所得税ないし法人税が課税されます。(法人税基本通達14-1-1)

(任意組合等の組合事業から生ずる利益等の帰属)
14-1-1 任意組合等において営まれる事業(以下14-1-2までにおいて「組合事業」という。)から生ずる利益金額又は損失金額については、各組合員に直接帰属することに留意する。(平17年課法2-14「十五」により追加)

(注) 任意組合等とは、民法第667条第1項に規定する組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項に規定する投資事業有限責任組合契約及び有限責任事業組合契約に関する法律第3条第1項に規定する有限責任事業組合契約により成立する組合並びに外国におけるこれらに類するものをいう。以下14-1-2までにおいて同じ。法人税を納める義務がある。

匿名組合の税務

法人税法では匿名組合について、匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益の額は、営業者の税金計算上損金(費用)とすると定めています。これは結果的に匿名組合員で課税されるということなので、結果的に各組合員で課税されるという点で、任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合と違いはありません。

税務上の2つの恩恵

任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合においては、主に以下の2つの税務上の恩恵を受けることが可能なため、主に株式投資ファンドに使用されることになります。

① 株式譲渡所得の申告分離課税

株式譲渡所得の申告分離課税とは、個人が株式等の譲渡による譲渡所得の金額は、他の所得の金額と区分して税金を計算する制度です。個人の所得税では最高税率が45%になりますが、この申告分離課税制度を使用すると税率が20%程度になります。したがって個人の組合員にとって恩恵の大きい制度になります。

② 受取配当金の益金不算入

受取配当金の益金不算入とは、法人が受け取る受取配当金に関して益金(所得)にしなくてよい制度です。受取配当金は投資先が利益から税金を支払ったものを配当するものです。その配当金を所得として税金を課税すると2重課税に該当し税負担が重くなるため、税務上は特別な規定を設けているわけです。(法人税法23条)

(受取配当等の益金不算入)
第二十三条 内国法人が次に掲げる金額(第一号に掲げる金額にあつては、外国法人若しくは公益法人等又は人格のない社団等から受けるもの及び適格現物分配に係るものを除く。以下この条において「配当等の額」という。)を受けるときは、その配当等の額(関連法人株式等に係る配当等の額にあつては当該配当等の額から当該配当等の額に係る利子の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額とし、完全子法人株式等、関連法人株式等及び非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の百分の五十に相当する金額とし、非支配目的株式等に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の百分の二十に相当する金額とする。)は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

まとめ

本日は組合型ファンドの税務処理について解説しました。組合型ファンドの税務処理のまとめは以下のとおりです。

  • 任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合は匿名組合と同様に各組合員が結果的に納税する
  • 任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合は、個人組合員の株式譲渡所得の申告分離課税、法人組合員の受取配当金の益金不算入、の2つの制度のため株式ファンドにしようされる。

手続きのご依頼・ご相談

投資組合の組成や金融商品取引業務に関するご相談は永田町司法書士事務所までお問い合わせください。