会社法では、自己株式を除く純資産の部における株主資本各項目間での振り替えが認められています。
このコラムでは、資本金・資本準備金・利益準備金・その他資本剰余金・その他利益剰余金の振替手続きについて、かんたんに解説していきます。
資本金からの振替手続き
資本準備金への振替
資本金の額を減少して、資本準備金の額を増加できます(会社法第447条1項2号、会社計算規則第26条1項1号参照)。
資本準備金に振り替えなかった分は、そのままその他資本剰余金に振り替わります。
なお、資本金の額を減少するときは、「株主総会の特別決議」「債権者保護手続き」「変更登記」が必要となります。
その他資本剰余金への振替
資本金の額を減少して、その他資本剰余金の額を増加できます(会社法第447条1項、会社計算規則第27条1項1号参照)。
利益準備金またはその他利益剰余金への振替
資本金の額を減少させても、利益準備金やその他利益剰余金への振り替えはできません。
なお、資本金からその他資本剰余金に振り替えを行い、その他資本剰余金の額をその他利益剰余金の額に振り替えることは可能です。
資本準備金からの振替手続き
資本金への振替
資本準備金の額を減少して、資本金の額を増加できます(会社法第448条1項、会社計算規則第25条1項1号参照)。
資本金に振り替えなかった分は、そのままその他資本剰余金に振り替わります。
なお、減少させた資本準備金全額を資本金に振り替えるときは、「株主総会の特別決議」が必要となりますが、「債権者保護手続き」は不要です。
その他資本剰余金への振替
資本準備金の額を減少して、その他資本剰余金の額を増加できます(会社法第448条1項、会社計算規則第27条1項2号参照)。
資本準備金の額を減少するときは、「株主総会の特別決議 ※1」「債権者保護手続き ※2」が必要となります。
※1 一定の要件を満たせば、取締役の決定(取締役会の決議)で行うことも可能です(会社法第448条3項)。
※2 定時株主総会において、欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えない額を減少させる場合、債権者保護手続きが不要(会社法第449条1項)。
利益準備金またはその他利益剰余金への振替
資本準備金から直接利益準備金やその他利益剰余金へ振り替えることはできません。
一方で、一旦その他資本剰余金に振り替えたのちにその他利益剰余金に振り替えることは可能です。
その他資本剰余金からの振替手続き
資本金への振替
その他資本剰余金の額を減少して、資本金の額を増加できます(会社法第450条1項、会社計算規則第25条1項2号参照)。
この場合、株主総会の普通決議によって、次の事項を定める必要があります。
・減少するその他資本剰余金の額
・資本金の額の増加がその効力を生ずる日
資本金準備への振替
その他資本剰余金の額を減少して、資本準備金を増加できます(会社法第451条1項、会社計算規則第26条1項2号参照)。
この場合、株主総会の普通決議によって次の事項を定める必要があります。
・減少するその他資本剰余金の額
・資本準備金の額の増加がその効力を生ずる日
利益準備金への振替
その他資本剰余金から利益準備金へ振り替えることはできません。
その他利益剰余金への振替
その他資本剰余金の額を減少して、その他利益剰余金の額を増加できます(会社法第452条)。
この場合、株主総会の普通決議によって次の事項を定める必要があります(会社計算規則第153条1項)。
・増加する剰余金の項目
・減少する剰余金の項目
・処分する各剰余金の項目に係る額
利益準備金からの振替手続き
資本金への振替
利益準備金の額を減少して、資本金の額を増加できます(会社法第448条1項、会社計算規則第25条1項1号参照)。
資本金に振り替えなかった分は、そのままその他利益剰余金に振り替わります。
資本準備金への振替
利益準備金から直接資本準備金へ振り替えることはできません。
その他資本剰余金への振替
利益準備金から直接その他資本剰余金へ振り替えることはできません。
その他利益剰余金への振替
利益準備金の額を減少して、その他利益剰余金の額を増加できます(会社法第448条1項、会社計算規則第29条1項2号参照)。
その他利益剰余金からの振替手続き
資本金への振替
その他利益剰余金の額を減少して、資本金の額を増加できます(会社法第450条1項、会社計算規則第25条1項2号参照)。
この場合、株主総会の普通決議によって次の事項を定める必要があります。
・減少するその他利益剰余金の額
・資本金の額の増加がその効力を生ずる日
資本準備金への振替
その他利益剰余金から直接資本準備金へ振り替えることはできません。
その他資本剰余金への振替
その他利益剰余金から直接その他資本剰余金へ振り替えることはできません。
利益準備金への振替
その他利益剰余金の額を減少して、利益準備金を増加できます(会社法第451条1項、会社計算規則第28条1項)。
この場合、株主総会の普通決議によって次の事項を定める必要があります。
・減少するその他利益剰余金の額
・利益準備金の額の増加がその効力を生ずる日
まとめ
資本金・資本準備金・利益準備金・その他資本剰余金・その他利益剰余金の振替については、それぞれ場合わけして内容を理解することが重要です。
ファンドの組成・スキーム検討等についてのご相談は、永田町リーガルアドバイザーまでお気軽にお問い合わせください。
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