適格機関投資家届出で失敗しないために―初めての届出で注意すべき実務ポイントとは?
ベンチャーファンド、不動産スキームなどを運営する企業にとって、適格機関投資家届出は、登録なしで資金調達型の私募スキームを展開するための実務的かつ不可欠な制度です。
しかし、初めて届出を行う事業者からは「何が落とし穴なのか分からない」という声も少なくありません。
今回は、届出制度を正しく活用するために最低限押さえるべき実務ポイントを整理します。
1.「適格機関投資家等特例業務」の対象者は限定されている
届出を行えば誰でも私募営業ができるわけではありません。
この制度の下で勧誘できるのは、以下の限定された投資家に限られます。
- 適格機関投資家(QII)
- 一定の少数投資家(49名以下)
※ただし勧誘対象や属性要件に制限あり
※一般個人投資家に向けた営業は、届出をしていても金融商品取引法違反となるリスクがあります。
2.届出書類の作成は「財務的裏付け」の確認がカギ
定款・直近期の財務諸表の内容次第で届出不可となるケースもあります。
書類作成の前に、必ず基礎的財務要件を確認しましょう。
3.届出は撤回できない。2年間は有効扱い
適格機関投資家届出は、提出日から2年間有効とされており、原則として自己都合による廃止・撤回はできません。
・仮に事業を停止しても、届出自体はそのまま有効とみなされます。
・更新の意思がなければ、2年経過後に自然失効する形となります。
・継続する場合は、再度「新規届出」を行う必要があります(更新届はありません)。
4.届出後も管理体制の整備が求められる
届出をすれば終わりではなく、運用中もコンプライアンス体制が問われます。
- 勧誘先の記録・同意書等の保管(投資家属性管理)
- 契約書面の整備(匿名組合契約書・私募要項等)
- 勧誘方法が適法であること(SNS等の活用には注意)
届出業者が不適切な勧誘を行った場合、行政指導・処分、将来的な登録審査への悪影響といったリスクが生じます。
まとめ
適格機関投資家届出制度は、中小企業やスタートアップが柔軟に資金調達スキームを構築する上で有用ですが、制度の趣旨・制限・実務要件を正確に理解したうえでの運用が不可欠です。
永田町リーガルアドバイザー株式会社では、適格機関投資家届出に関する審査・書類作成・財務要件チェックなどご支援しております。
制度活用をご検討の際は、お気軽にご相談ください。