重要な使用人とは?金融商品取引法における定義と届出のポイント
金融商品取引法では、登録申請時において「役員」と同様に扱われる一定の使用人が存在します。
こうした立場の人を、通称「重要な使用人」または「政令使用人」と呼びます。
法的根拠と定義
- 金融商品取引法第29条の2第1項第4号
- 金融商品取引法施行令第15条の4
- 金融商品取引業等に関する内閣府令第6条
これらに基づき、以下のように定められています。
- コンプライアンス系
法令遵守に関する業務を統括する者、その権限を代行し得る地位にある者。 - 助言・運用系
投資助言業務や投資運用業に関し、助言や運用(指図を含む)を行う部門を統括する者、または金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う者。
登録申請書への記載
- コンプライアンス系 → 登録申請書の第5面に記載。
- 助言・運用系 → 登録申請書の第6面に記載。
実務上の留意点
- コンプライアンス責任者の上位や補佐役、法務部長・内部管理統括責任者等も、職務権限の内容次第で「重要な使用人」に該当する場合があります。
- 助言運用系では「部門責任者」だけでなく、投資判断を行う「判断分析者」も届出対象となります。
- 一方で、顧客に投資判断を伝達する「助言者」は、独自に判断を行わない限り届出不要です。
届出義務の緩和と除外
- 令和5年8月15日以降、有価証券関連業を行う第一種金融商品取引業では、外務員を兼務する判断分析者は重要な使用人から除外されています。
- ただし、投資助言・代理業における「助言者」や投資運用業における「運用執行者」は、表面的な理解に反して重要な使用人には含まれません。
役員と重要な使用人の関係
- 取締役などの役員は「使用人」には該当しません。
- 役員がコンプライアンス責任者や判断分析者を兼ねる場合、第4面(役員欄)への記載で足り、第5面・第6面への重複記載は不要と整理されています。
- ただし実務上は整理が揺れており、使用人兼務役員の扱いには複数の解釈が存在していました。現在は「役員が役員の職責として行う場合は該当なし、使用人が取締役を兼務する場合は該当あり」とされています。
人的構成書面と審査の厳格化
- 登録申請時や変更届の際には、履歴書だけでなく「人的構成書面」の提出が必要です。
- 職務経歴は詳細に記載を求められ、単なる在籍事実では足りず、実際の業務経験と申請業務との整合性が厳しくチェックされています。
- 近年はコンプライアンス担当者に実務経験があるか、投資判断分析者が実際に判断業務を担った経験があるかなど、具体的な適合性が重視される傾向にあります。
まとめ
「重要な使用人」は、コンプライアンス系と助言運用系に大別されます。
登録申請や変更届では必ず確認が求められる項目であり、該当者の有無や記載の要否を誤ると、届出漏れや審査不備につながるリスクがあります。