「広告」と「勧誘」の違い、説明できますか?金融商品取引業の規制対象になる境界線とは
金融商品に関連するビジネスにおいて、「これは広告だから問題ない」「契約には関わっていないから大丈夫」といった判断がなされることがあります。
しかし、その“広告”が実質的に「勧誘」と評価され、金融商品取引業の登録が必要な媒介業務に該当する可能性があることは、意外と見落とされがちです。
広告と勧誘の線引きは、形式ではなく「実質」で判断される
金融商品取引法における「媒介業務」への該当性は、単なるリンク掲載や紹介コメントといった形式ではなく、行為の実質が「契約成立に向けた働きかけ」と見なされるかどうかで判断されます。
たとえば以下のようなケースは、媒介行為と評価される可能性があります。
- 特定のFX業者の口座開設リンクを掲載し、「このツールを使うにはこの業者の口座が必要」と明記している
- 特定の証券会社を強く推奨する投稿をSNS等で繰り返す
- 成果報酬型アフィリエイトを通じて金融商品の契約誘導を図る
こうした構成が「契約の成立を目指して尽力する行為」と捉えられた場合、第一種金融商品取引業に該当する媒介業務にあたると評価されるリスクがあります。
定義の曖昧さと、実務判断の難しさ
金融商品取引業における「勧誘」と「広告」の違いは、法律上明確に定義されているものではなく、実務上も判断が難しい領域とされています。
形式上は広告に見える行為であっても、実質的に勧誘・媒介と評価されると、登録の有無が重大な法的意味を持つことになります。
かつて金融法制の専門家会議でもこの問題が議論された経緯があり、金融当局も慎重に対応している領域です。
無登録で媒介行為を行った場合のリスク
第一種金融商品取引業の登録を受けずに、媒介に該当する行為を反復継続して行った場合、次のようなリスクが生じます
- 無登録営業としての行政処分(業務停止・登録拒否等)
- 刑事罰(懲役・罰金)の対象となる可能性
- 金融商品取引法違反による損害賠償請求や訴訟リスク
「販売していない」「契約していない」という理由だけでは免責されず、行為の内容と構成が重視されます。
「情報提供」のつもりが、規制対象になることもある
SNSや動画、ブログ等での情報発信が当たり前となった今、金融商品に関する情報提供も多様化しています。
しかし、その発信が実質的に「契約を成立させようと尽力する行為」であれば、媒介業務に該当し、登録が必要となる可能性が高まります。
とくに次のようなケースは、慎重な検討が必要です。
- 成果報酬型の送客スキーム(アフィリエイト、IB契約など)
- 特定の事業者を繰り返し推奨する構成
- サービス導入の過程に「特定金融機関の口座開設」が含まれている場合
「広告だから大丈夫」と過信せず、構成の実態を丁寧に見直すことが、法的リスクを避ける第一歩です。