【共同保有とは?】大量保有報告書で注意すべき「共同保有者」の範囲と判断基準
大量保有報告書においては、単に自社や自己名義の保有株式数のみならず、「共同保有者」の株式も含めて「株券等保有割合」を算出する必要があります。
この共同保有者の範囲は明確に定義されておらず、実質的支配関係に基づいて判断されるため、実務においては慎重な分析が必要です。
■ 結論:契約・資本関係・意思統一が「共同保有」と見なされる要素
金融商品取引法に基づく共同保有者とは、形式的な名義人ではなく、実質的に保有行動を共同でしている者を指します。
共同保有者がいると判断される典型的ケースは次のとおりです。
ケース | 説明 |
---|---|
親会社と子会社 | 意思決定が親会社の支配下にある |
株主間契約 | 保有株式の売却制限や議決権の行使方針を合意している場合 |
投資ファンドとGP(無限責任組合員) | 実質的に運用方針を決定している |
役員とその個人資産管理会社 | 意思統一が明らかであるケース |
信託設定者と受託者(受益者指定型) | 実質的な支配関係が明らかな場合 |
■ 実務で注意すべきポイント
- 名義人が異なっていても、「実質的な取得・保有・売却の決定権」が共有されていれば共同保有とみなされる
- 形式的に「第三者名義」としている場合でも、指示関係や契約により実質的支配があると判断される
- 逆に、ファンド同士で全く意思統一がなされていない場合などは、共同保有とまでは言えない場合もある
■ 金融庁の見解(Q&Aより抜粋)
「実質的に保有又は取得の決定を共同して行う関係がある場合には、名義にかかわらず共同保有と判断する」
「共同保有に該当するか否かは、契約の内容、関係当事者の実態等を踏まえて総合的に判断すべきである」
(出典:金融庁「大量保有報告制度に関するQ&A」)
■ 提出書類への影響
共同保有者がいる場合には、
- 各共同保有者の氏名・住所等の記載
- 共同保有契約の概要(該当があれば)
- 共同保有者ごとの保有株券数
といった情報を正確に報告書に反映させる必要があります。
■ まとめ
共同保有の認定を甘く見ると、報告書に誤りが生じ、訂正命令や過料のリスクにつながります。
特に投資家間で契約や合意が存在する場合は、その内容が「保有割合の統一管理」に該当しないか注意深く検討する必要があります。
永田町リーガルアドバイザー株式会社では、大量保有報告制度における共同保有者該当性の判断や、大量保有報告書提出代行業務の対応を行っています。お気軽にご相談ください。