【専門家が解説】大量保有報告書の「取得日」はいつ?実務で迷わない判断ポイントとは
大量保有報告書の提出義務は、「株券等の取得により保有割合が5%を超えた場合」に発生します。
このとき、提出期限を計算する起点となるのが「取得日」ですが、この取得日がいつになるかは、取引形態や契約内容によって異なるため、誤認しやすい論点です。
本コラムでは、金融庁のガイドラインやQ&Aをもとに、取得日の判断ポイントを整理します。
■ 結論:原則は「株券等の取得が確定した日」
取引類型 | 取得日の基本的な考え方 |
---|---|
現物売買 | 売買契約の成立日(売買予約でなく本契約) |
新株予約権の行使 | 行使申請に基づく割当確定日 |
株式交付 | 効力発生日(交付株式の割当が確定する日) |
信託受益権の取得 | 信託契約が効力を生じた日(信託設定日) |
※大量保有報告書では「取得の効力が発生した日」が重要であり、単なる意向表明や予約段階ではカウントされません。
■ 注意が必要な実務例
ケース | 解説 |
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株式売買契約を締結後、クロージングが後日 | 取得日は「契約日」ではなく、引渡しによって取得が確定した日と解される場合が多い |
株式報酬としての割当 | 株式報酬型ストックオプション等では、割当決定日を基準とする実務が多い |
株式の贈与 | 贈与契約が効力を生じた日(通常は契約締結日) |
新株予約権の行使通知から数日後の株式交付 | 実務では、株式発行日=取得日として扱う |
■ 実務での判断フロー
- 契約や通知の形式的日付ではなく、実際に効力が発生した日を確認する
- 「報告義務発生日の翌日から5営業日以内」に報告が必要
- 書類提出が遅れると、金融庁による調査・指導の対象となる可能性あり
■ 金融庁のガイドライン(参考)
「株券等の取得日とは、株券等の取得が確定した日をいう。契約締結日が必ずしもこれに該当するわけではない点に留意が必要である。」
(金融庁『大量保有報告制度に関するQ&A』より要旨)
■ まとめ
取得日の誤認は、提出期限のカウントミスに直結し、過料・課徴金のリスクを高めます。
契約書や取引書類の内容を丁寧に読み解き、「効力発生の日」を正確に把握することが実務では重要です。
永田町リーガルアドバイザー株式会社では、大量保有報告書関係業務に対応しています。複雑な取引スキームにおける取得時期の法的判断に不安がある場合は、ぜひ専門家にご相談ください。