ファンドによる適格機関投資家の届出は可能か
ファンドが適格機関投資家(QII)として届出を行うことができるかは、実務上しばしば相談されるテーマです。本稿では、定義府令の規定および金融庁パブリックコメントに基づき、ファンド自体の届出可否と届出時に求められる情報について整理します。なお、本稿は提示された元情報の範囲内での解説です。
ファンド自体が適格機関投資家の届出を行えるか
ファンドが届出を行う場合、定義府令(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令)10条1項23号ロが想定されます。
しかし、同号では届出主体を「業務執行組合員等」と規定しており、ファンドそのものを届出者とすることはできません。
したがって、届出はファンドのGP名義で行う必要があります。
さらに、金融庁パブリックコメント(p.25 No.32)では、
組合自体には法人格がないため、組合自体は適格機関投資家の届出を行うことができない
旨が明記されています。
具体的には、次の点が示されています。
- 「民法組合等の出資対象事業における有価証券投資を通じて知識・経験を得ている業務執行組合員等」を届出対象とする制度設計であること
- 業務執行組合員等が銀行など既に適格機関投資家である場合には、別途届出は不要であること
- 一方で「組合自体」は法人格を持たないため届出できない点に留意すべきこと
(引用元:金融庁パブリックコメント https://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20070731-7/00.pdf)
届出に際して一般的に必要となる情報等
届出時に必要となる情報として次の事項が整理されています。
(1)GPの有価証券残高(10億円以上)
GPが届出を行う場合、
GPが保有する有価証券残高が10億円以上
であることが要件として求められます。
したがって、届出時には基礎情報に加え、この残高を確認したうえで提出することが必要となります。
また、
届出者がどのファンドのGPであるか
を明示する必要があり、当該情報は登録情報として縦覧の対象となります。
(2)非居住者が届出する場合
非居住者等が届出を行う場合には、
委任状等が必要(定義府令10条12項)
とされています。
(3)添付書類の原則
原則として添付書類は不要
とされています。
もっとも、
届出内容によっては、有価証券残高証明書等の追加資料を求められる場合がある
点が付記されています。
おわりに
当事務所では適格機関投資家等特例業務の届出を含む、金商法関連の各種届出書の作成・提出に対応しています。
QII届出に関してご不明点がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

