倒産隔離とは何か?GKTKスキームにおける一般社団法人の活用とその効果
不動産や再エネ設備などの資産証券化において、投資家保護とスキームの安定性を確保するために不可欠な概念が「倒産隔離(bankruptcy remoteness)」です。
とりわけGKTKスキームでは、合同会社(GK)を利用することによって機動的にSPCを設立できる一方で、親会社や発起人の倒産リスクがスキームに波及しないようにする仕組みが求められます。
本稿では、GKTKスキームにおける倒産隔離の考え方と、その実現手段として用いられる一般社団法人の活用について解説します。
■ 倒産隔離とは?
倒産隔離とは、スキームの設計上、当初のオリジネーター(資産譲渡人・発起人など)の倒産がSPC(特別目的会社)に影響しないように構築する仕組みを指します。
なぜ重要なのか?
- SPCが倒産すると、投資家の出資が毀損するリスクがある
- 資産の差押え、口座凍結等によりスキーム全体が機能不全に陥る可能性
- 金融機関やレンダーは、倒産隔離が確保されていないSPCへの融資を嫌う
■ GKTKスキームにおける構造例
GKTKスキームでは、合同会社(GK)をTKスキームの営業者(匿名組合の相手方)としますが、このGKの親会社をどう設計するかが、倒産隔離の鍵を握ります。
一般的な構造
投資家 → TK契約 → GK(営業者)
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一般社団法人(非営利目的、親会社)
■ なぜ一般社団法人が使われるのか?
特徴 | 説明 |
---|---|
非営利法人 | 法的に剰余金分配が禁止されており、親会社としての収益目的がない |
設立が容易 | 登録免許税6万円、営利法人より設立・維持コストが低い |
意思決定の独立性 | 理事構成等を中立的に設計すれば、オリジネーターからの影響遮断が可能 |
解散制限型の基金 | 社団法人の基金返還制限を設けることで、実質的に「不可逆的な資金拠出」に近づけられる |
こうした一般社団法人を中間持株会社とした構造は、「GKTKSH」スキームとして不動産証券化・インフラファイナンス等で実績があります。
■ 実務上の設計例:倒産隔離の確保ポイント
- 一般社団法人の設立時社員・理事を中立的な第三者(弁護士・会計士等)とする
- 定款に「譲渡制限」「基金の返還禁止」「理事解任の要件厳格化」等を盛り込む
- GKと社団法人の間で、経済的な支配・指揮命令関係が生じないよう明確に区分
➤ オリジネーターが影響を行使できない法人構造をとることで、GKが倒産隔離されたSPCとして機能します。
■ 法的義務ではないが、実務上は「事実上の必須条件」
倒産隔離は、金融商品取引法上の明文義務ではありません。
しかしながら、
- 金融機関の融資審査において評価される
- 登録申請時のヒアリングで問われることがある
- 投資家・信託受託者・アセットマネージャーなどの関係者の信頼確保に直結
するため、実務上は「講じておくべき措置」として位置づけられています。
■ まとめ
GKTKスキームにおいては、合同会社(GK)そのものの設計だけでなく、その上位法人(親会社)構造をどう設計するかが極めて重要です。
倒産隔離は、投資家・レンダー・信託関係者の信頼確保のための基盤であり、中立性・継続性・不可逆性を備えた一般社団法人の活用が、現代のスタンダードとなりつつあります。
永田町リーガルアドバイザー株式会社では、GKTKスキームの組成に加え、倒産隔離の観点から一般社団法人の設計・設立、定款整備まで、包括的に対応しております。ご検討の際は、お気軽にご相談ください。