NAGATACHO LEGAL ADVISOR

ご相談・ご依頼

FORMお問い合わせフォーム

FORM

コーポレートファイナンス

フィナンシャル・アドバイザリー
適時開示・IRサポート

コンプライアンス・規制対応支援

不正調査対応業務
法定開示書類作成・提出代行(EDINET対応)

ファンド組成・管理業務

ファンド組成支援
有限責任事業組合(LLP)
投資事業有限責任組合(LPS)
任意組合(NK)
匿名組合(TK)
第二種金融商品取引業
ファンド管理業務

適格機関投資家等特例業務

適格機関投資家届出業務
適格機関投資家等特例業務届出

内部統制の評価範囲の実務リスク、不正が「評価対象外」で起きたときに何が問題になるのか

内部統制に関する議論の中で、「評価範囲」という論点は後回しにされがちです。
しかし、不正調査の現場では、この評価範囲の判断が問題の中心になることが少なくありません。

典型的には、次のようなケースです。

「当該業務は内部統制の評価対象外でした」

一見すると合理的な説明にも見えますが、この説明だけで済むことはほとんどありません。
むしろ実務では、

  • なぜ評価対象外としたのか
  • その判断は合理的だったのか
  • 本来は評価対象に含めるべきではなかったか

といった点が厳しく問われます。

本稿では、内部統制の評価範囲をめぐる実務上のリスクを、不正調査対応の観点から整理します。

評価対象外=責任がない、ではない

内部統制の評価範囲は、企業側(経営者)が決定します。
したがって、「評価対象外であった」という事実は、責任を回避する理由にはなりません。

むしろ問題となるのは、

評価対象外とした“判断そのもの”です。

例えば、不正が発覚した際には、次のような整理がなされます。

論点問われる内容
評価範囲の設定なぜその業務・拠点を外したのか
リスク認識不正リスクをどの程度認識していたか
判断プロセス経営者として合理的な検討がなされていたか

この検証に耐えられない場合、単なる統制不備ではなく、

内部統制の設計自体に問題があった

と評価される可能性があります。

なぜ「評価対象外」で不正が起きるのか

実務上、「評価対象外」で不正が発生するケースには一定の傾向があります。

1 売上規模だけで判断している

評価範囲を

  • 売上上位拠点のみ
  • 金額基準のみ

で決めている場合、小規模拠点や補助的業務が対象外となります。

しかし実際には、

  • 管理が緩い
  • 人員が少ない
  • 承認が形式的

といった理由から、こうした領域の方が不正リスクは高いことがあります。

2 定型業務だけを対象にしている

標準的な業務フロー(売上・仕入・決算)だけを評価対象とし、

  • 例外処理
  • 手作業
  • 非定型業務

を対象外とするケースです。

不正はむしろ、

例外処理の中で発生することが多い

という点が見落とされがちです。

3 海外・遠隔拠点を形式的に除外している

海外子会社や遠隔拠点について、

  • 管理が難しい
  • 情報取得が困難

といった理由で評価対象から外しているケースです。

しかし、

物理的に遠い=統制が弱い

ため、リスクはむしろ高くなります。

4 過去の不備を評価範囲に反映していない

過去に不備があったにもかかわらず、評価範囲を見直していないケースです。

この場合、不正発覚時には

  • 再発防止ができていなかった
  • リスク評価が形骸化していた

と評価される可能性があります。

改訂基準が示している方向性

近時の内部統制の評価・監査基準の見直しでは、次の点が明確になっています。

  • 評価範囲は一律基準で決めるものではない
  • 財務報告への影響の重要性を踏まえて判断する
  • 不正リスクを考慮した評価が必要

つまり、

「売上が大きいから重要」ではなく
「不正が起きうるから重要」

という考え方へのシフトです。

不正調査で実際に問題になるポイント

不正が発覚した場合、評価範囲については次の観点で検証されます。

1 なぜ対象外としたのか説明できるか

  • 金額基準だけで判断していないか
  • リスク評価が形式的ではないか

2 不正リスクの検討がされていたか

  • 業務特性(現金・手作業・例外処理)を見ていたか
  • 組織的な弱点(人員不足・権限集中)を把握していたか

3 監査人との認識が一致していたか

評価範囲については、監査対応の中でも重要な論点となります。
後から齟齬が生じると、評価のやり直しが発生する可能性があります。

実務対応

― 評価範囲は「説明できる状態」で設計する

実務上重要なのは、評価範囲を

・広く取ること
ではなく
・説明できる形で決めること

です。

具体的には、

  • 金額基準+リスク要因で判断しているか
  • 除外理由を文書で整理しているか
  • 不正リスクを明示的に検討しているか

といった点を押さえる必要があります。

まとめ

― 評価範囲は不正対応の「前提条件」

内部統制の評価範囲は、単なる作業範囲ではありません。

  • どこを監視対象とするか
  • どこにリスクがあると認識していたか

という、企業のリスク認識そのものを示すものです。

そのため、不正が「評価対象外」で発生した場合、

問題となるのは不正そのものだけではなく、

「なぜそこを見ていなかったのか」

という判断です。

内部統制は、評価のために存在するものではなく、不正を防止し、発生時に適切に対応するための仕組みです。
評価範囲の設計は、その前提となる重要な意思決定であるといえます。