匿名組合FAQ 実務で頻出する疑問と回答
Q1. 匿名組合とは何ですか?
商法第535条に基づく契約形態で、出資者(匿名組合員)が営業者に出資し、その営業から生じた利益を分配するものです。取引は営業者の名義で行われ、出資者は対外的に責任を負いません。
Q2. 民法組合やLPSと何が違いますか?
- 匿名組合:営業者と各出資者の1対1契約の集合体。匿名組合員は表に出ない。
- 民法組合:組合員全員の共同名義で取引、無限責任。
- LPS:投資事業有限責任組合契約に基づく制度型。有限責任と無限責任の区分あり。
Q3. 匿名組合はライセンスなしで組成できますか?
できません。自己募集は原則として第二種金融商品取引業の登録が必要です。親子会社間や単発取引であっても「無登録で良い」とする整理は実務上認められていません。
Q4. 出資金を「事業投資」に使う場合は投資運用業は不要ですか?
実態で判断されます。資金を有価証券や他のファンド持分に再投資すれば投資運用業の登録が必要です。「事業投資」という名称で規制を回避することはできません。
Q5. 適格機関投資家等特例業務を使えば登録不要ですか?
条件を満たせば可能です。
- 1名以上の適格機関投資家を含むこと
- その他の投資家は49名以下に制限されること
この枠組みであれば、第二種金融商品取引業や投資運用業の登録をせずにファンドを組成・運用できます。
Q6. 匿名組合の分配はどのように課税されますか?
- 個人:原則「雑所得」として総合課税。分配金には20.42%の源泉徴収。
- 法人:実際の分配がなくても期末に契約持分に応じて損益認識(法人税法基本通達14-1-3)。
- 非居住者・外国法人:原則20.42%の源泉分離課税。ただしPEを有する場合は追加課税あり。
Q7. 源泉徴収は回避できますか?
できません。営業者が必ず源泉徴収を行う義務を負います。徴収漏れは営業者自身に追徴課税が及ぶリスクがあります。
Q8. 分配を受けていないのに課税されることはありますか?
法人匿名組合員の場合、期末に損益を認識するため、キャッシュがなくても課税が発生します。資金繰りに影響するため注意が必要です。
まとめ
匿名組合は、事業型ファンドの標準スキームとして便利ですが、
- 金商法上の登録要否
- 投資運用業の該当性
- 税務上の課税タイミングと源泉徴収
といった論点で誤解が多い制度です。
FAQ形式で押さえておけば、実務対応の抜け漏れ防止ツールとして有効に活用できます。