名義だけの適格機関投資家のリスク、プロ向け特例ファンドでありがちな“形式参加”のリスク
適格機関投資家等特例業務(いわゆるプロ向けファンド)では、制度上、適格機関投資家を1名以上含むことが義務付けられています。
しかし、実務上はこの要件を形式的にしか満たしていないスキームも散見されており、行政処分の対象となるリスクが高い点に注意が必要です。
なぜ「適格機関投資家1名以上」が求められるのか?
この制度は、「主にプロ向けの限定的なスキームだから登録が不要」とする趣旨で設計されています。
その前提となるのが、資金の中心に適格機関投資家が存在していることです。
つまり、“プロが関与しているから”一般投資家向けよりも規制が緩くなっているのであり、適格機関投資家の存在は形式ではなく実質的に重視される要件です。
よくあるNGスキーム「名義借り」や「便宜的な出資」
実務で問題となりがちなケースとしては、以下のような構成が挙げられます。
- 元金融機関出身者の法人名義だけを借りて、適格機関投資家と見なす
- 無関係な法人に少額出資だけをしてもらい“適格”枠を形式上満たす
- 紹介者やスポンサーが適格業者の名義を使って参画したことにしている
このような形で「名義だけ」を使って適格機関投資家要件を充たそうとする行為は、実務上たびたび問題視されており、このような対応による処分事例も存在します。
つまり単に「名前を借りる」「ちょっとだけ出資する」だけでは不十分であり、金融当局は“形式”ではなく“実態”で判断してくるということです。
制度上も「実質性」が求められている
適格機関投資家は、名義上存在していればいいというものではありません。
以下のような観点から、実態としての出資・関与・経済的リスクの負担などが精査されます。
- 実際の出資額・比率
- ファンドの意思決定への関与の有無
- 契約条件や優先劣後構造の中での位置付け
- 資金の出所やスキーム全体との関連性
「とりあえず1社入れればOK」は通用しない
適格機関投資家等特例業務においては、適格機関投資家の“実質的な参加”が大前提です。
その役割が名ばかりであった場合、たとえ届出を出していたとしても、スキーム全体が“無登録営業”と評価されるリスクが高い点を忘れてはなりません。
制度の趣旨に即した運営ができていない場合、形式的に条件を整えていても、厳格な行政対応がなされる可能性があります。