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    外為法における事前届出の免除制度と審査スケジュール、外国投資家による投資を円滑化する仕組みと実務留意点

    免除制度とは何か

    外為法第27条に基づく「対内直接投資等の事前届出制度」では、原則として届出が必要ですが、
    一定の条件を満たす場合に限り、「免除制度」の適用が認められます。
    これは、国家安全保障を損なわない範囲で投資を円滑化する目的で設けられています。

    非上場企業への投資における免除制度

    非上場会社への投資について、以下3つの条件をすべて満たす場合には、
    事前届出を行わずに投資を実施することが可能です。

    条件内容
    ① 投資家の属性一般投資家、または財務省が認証したSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)等であること
    ② 投資先の業種コア業種(国の安全等を損なうおそれが大きい業種)に該当しないこと
    ③ 投資家の行動制限– 役員に就任しない
    – 非公開の技術情報にアクセスしない
    – 事業の譲渡・廃止を株主総会に提案しない

    これらの基準を遵守することにより、事前届出免除制度を利用可能とされています。
    ただし、免除を利用した場合でも、実行後45日以内に事後報告書の提出が必須です。

    「コア業種」とは

    免除制度の可否を判断するうえで最も重要なのが、「コア業種」に該当するかどうかです。
    コア業種は、国の安全保障上特に重要な分野として財務省告示で指定されており、主な例は以下のとおりです。

    区分例示
    安全保障関連武器・航空機・宇宙開発・原子力関連製造業
    先端製造半導体製造装置、蓄電池、金属3Dプリンターなど
    インフラ関連電力、ガス、通信、鉄道、上水道、放送
    医療・資源感染症対応医薬品、高度管理医療機器、重要鉱物資源の採掘・精錬など

    コア業種に該当する企業への投資は、原則として免除の対象外となり、審査付事前届出が必要です。

    上場企業への投資における免除制度

    上場企業についても、以下の条件を満たす場合には免除制度を利用できます。

    投資家区分対象業種主な要件
    外国金融機関すべての指定業種業法上の監督を受けていること、役員就任・情報アクセスの禁止などを遵守
    一般投資家/認証SWFコア業種以外役員就任禁止・情報アクセス禁止など一定基準を遵守
    一般投資家/認証SWFコア業種(10%未満取得)上乗せ基準(取締役会参加禁止、期限付き提案禁止など)を遵守

    このうち、「上乗せ基準」とは、コア業種に関する経営関与をさらに制限する追加的な基準を指します。

    株式取得時の判断フロー(上場・非上場)

    財務省資料に示されるフロー(p.18, p.23参照)に基づくと、判断は次の手順で行います。

    1. 取得予定者が「外国投資家」に該当するか
    2. 投資先企業が「事前届出業種」を営んでいるか
    3. 免除制度を利用できる条件を満たすか(一般投資家、非コア業種、基準遵守)

    この3条件を満たす場合、事前届出不要(ただし事後報告要)となります。
    いずれかが欠ける場合は、原則として事前届出が必要です。

    審査期間と禁止期間

    事前届出を提出した場合の審査スケジュールは、次のように定められています。

    区分内容
    届出時期投資等を行おうとする日の6か月以内
    禁止期間原則30日間(最大5か月まで延長可能)
    審査機関財務大臣および事業所管大臣
    結果公示日本銀行ウェブサイトに受理番号を掲載(通知は行われない)

    審査中は投資行為を実施できませんが、国の安全に支障がない場合は短縮されることもあります。

    事後報告義務

    免除制度を利用した場合でも、投資実行後45日以内に実行報告書(事後報告)を提出しなければなりません。
    また、審査対象取引であっても、実行後45日以内に実行報告を行う必要があります。

    実務上の留意点

    • 免除制度の適用可否は、業種分類と投資家属性の二軸で判断。
    • 外国政府系ファンド(非認証SWF)やコア業種への投資は免除対象外。
    • 届出書や報告書の提出は日本銀行経由が原則。
    • 審査完了後も、日本銀行HPの公示で確認する必要がある。

    まとめ

    事前届出制度は、単に「外資規制」ではなく、安全保障と投資促進のバランスを取る仕組みです。
    免除制度を活用することで、手続きを簡素化しつつ、法令遵守と情報管理を両立できます。

    投資を受け入れる企業側としても、自社がコア業種に該当するかどうかを日常的に把握しておくことが、
    スムーズな外資対応の第一歩となります。