投資事業有限責任組合(LPS)の仕組みと実務上の特徴
LPSとは何か
投資事業有限責任組合(Limited Partnership for Investment:LPS)は、投資事業有限責任組合法に基づく制度型の組合です。ベンチャー投資やプライベート・エクイティなど、成長企業へのリスクマネー供給を目的として設計されました。
匿名組合が「営業者と匿名組合員の二者間契約」であるのに対し、LPSは複数の組合員による一体的な契約であり、法律に基づいて組織される点に大きな違いがあります。
組合員の責任構造
LPSの特徴は、有限責任組合員(LP)と無限責任組合員(GP)を区別していることです。
- GP(General Partner):業務執行を担い、無限責任を負う
- LP(Limited Partner):出資額を限度に責任を負う
この仕組みにより、投資家は限定責任の立場から安心して資金を供給できる一方、運営者であるGPは責任と権限を集中して持つことになります。
実務上の利用例
LPSは、特にベンチャーキャピタルファンドやPEファンドで利用される標準的な器です。
- ベンチャー企業への株式投資
- M&Aによる事業承継ファンド
- 成長企業のバイアウト投資
これらの場面では、投資家はLPとして資金を拠出し、GPが投資先の発掘・育成・EXIT戦略を実行します。
税務上の取扱い
LPSも匿名組合と同様にパススルー課税が採用されています。
つまり、組合自体に課税されず、損益は組合員に帰属します。
ただし、LP・GPの責任構造や組織形態が法制度として明文化されているため、匿名組合よりも制度的安定性が高いと評価されています。
匿名組合との比較ポイント
項目 | 匿名組合 | LPS |
---|---|---|
法源 | 商法 | 投資事業有限責任組合法 |
契約形態 | 営業者と組合員の1対1契約(集合体) | 多数当事者による単一契約 |
責任 | 匿名組合員は対外的責任なし | LPは有限責任、GPは無限責任 |
主な利用 | 事業型ファンド、不動産証券化 | VC/PE、成長企業投資 |
税務 | パススルー課税 | パススルー課税 |
まとめ
- LPSは、成長企業投資を前提にした制度型ファンドビークルであり、ベンチャー・PE領域で不可欠。
- 匿名組合よりも法的安定性と投資家保護の仕組みが明確。
- ただし、GPに無限責任が集中するため、GPの信用力・運営能力が極めて重要。
匿名組合を理解したうえでLPSを学ぶと、ファンドスキーム選択の実務判断が一層明確になります。