投資事業有限責任組合(LPS)の期間設定と清算フェーズの実務
当事務所では、LPSの設立から清算まで一貫してサポートしています。
組成時には「期間設定」を軽視しがちですが、清算フェーズの設計こそが、ファンド運営の完成度を決めると言っても過言ではありません。
LPSの存続期間の基本設計
投資事業有限責任組合法では、組合の期間を定めることが前提とされています。
実務では、
- 10年前後を基本期間とし、
- 投資期間(例:5年)+回収期間(例:5年)
の二段構成で設定されるのが一般的です。
ただし、すべての案件が予定通りEXITできるとは限りません。
そのため、期間延長条項(Extension Clause)を設けて、
- 取締役会または組合員総会の決議
- 監督官庁への届出
を条件に、1〜2年の延長を2回程度まで可能とする設計が多く採用されています。
延長条項の実務上のポイント
- 目的の明確化
「未回収案件の整理」「残余資産の売却完了」など、延長理由を契約書上で具体的に定義しておく。 - 決議方法の整備
組合員全員の合意を必要とするか、一定割合の多数決とするかで柔軟性が変わる。 - 課税関係への影響
延長期間中もパススルー課税は継続するため、期末損益認識とキャッシュ配分のズレに注意が必要。
清算フェーズの流れ
LPSの期間が満了すると、清算手続に入ります。
一般的な手順は以下の通りです。
- 清算開始決議
組合員の合意により清算人を選任。通常はGPがそのまま清算人となる。 - 債務の確定・弁済
未払費用・未分配利益を整理。 - 残余財産の分配(ウォーターフォール)
LPへの出資金返還 → 優先分配 → キャリー分配の順で実施。 - 清算完了報告書の作成・登記
清算完了後は組合契約に従って登記・届出を行い、LPSの法人格が消滅。
実務上の論点とトラブル例
- 延長が認められない場合の未回収案件処理
→ 残存資産をGPが買い取る場合、時価評価・利益相反の適正手続が不可欠。 - LPとの利益相反
→ キャリー分配を清算前に確定させるか、完了後に調整するかで紛争が起こりやすい。 - 税務リスク
→ 清算完了年度に残余財産の再評価益が発生する場合、LPに課税負担が生じる可能性がある。
まとめ
- LPSは「設立時の華やかさ」よりも、「終わらせ方」に真価が出るスキーム。
- 期間設定・延長条項・清算条項を最初の契約書段階で論理的に設計しておくことが重要。
- 清算フェーズでの手続・税務・分配を誤れば、せっかくの運用成果が毀損する。