投資事業有限責任組合(LPS)は万能ではない、LPSを使うべきでない場面の整理
投資事業有限責任組合(LPS)は、VC・PE分野で広く利用される代表的なファンド・ヴィークルです。
しかし、実務においては、
「LPSで組めますか?」
という問いに対し、むしろ
「LPSでは適さない可能性があります」
と回答すべき場面も少なくありません。
本稿では、LPSを“使うべきでない”典型的なケースを整理します。
① 小規模ファンドには不向きな場合がある
LPSは毎事業年度、財務諸表を作成し、
公認会計士または監査法人の意見書を備え置く必要があります(LPS法)。
つまり、監査コストが構造的に発生します。
数千万円規模のファンドであっても監査は必要であり、
監査報酬は固定費的に発生します。
そのため、
・出資総額が小さい
・短期間で解散予定
・投資回数が少ない
といった設計では、
コスト構造が合わないことがあります。
② 現物不動産投資を主目的とする場合
LPS法は事業目的を限定列挙しています。
不動産の「現物取得・賃貸」は原則として予定されていません。
可能なのは、金銭債権の担保目的物等に限定される整理です。
したがって、
・賃貸収益型不動産ファンド
・太陽光発電所の直接保有
・船舶・航空機の直接保有
といったアセット保有型スキームは、
LPSでは適合しにくい設計です。
実務上、不動産証券化目的でLPSが使われる例は限定的です。
③ 高頻度売買・ディーリング型
LPSは中長期投資型(VC・PE)との親和性が高い制度です。
・上場株式の短期売買
・インデックス型投資
・デリバティブ単体運用
といったストラクチャーでは、
会計処理や事務負担の観点からも、
信託形式等が選択されることが一般的です。
デリバティブについても、ヘッジ目的は許容され得ますが、単体目的での運用は制度趣旨と整合しません。
④ 非営利型設計を想定する場合
LPSは営利組合として設計されています。
出資者が元本を超えて分配を受けない、いわゆる「非営利型」に近い設計は、
利益帰属の処理や清算時の処理で整合が取れません。
公益的目的での資金プールは、LPS制度とは思想が異なります。
⑤ GP出資を極小化したい場合
GPも出資を一口以上行う必要があります。
また、一口金額は均一です。
GPのみ極端に小額出資とする設計は、口数設計の工夫が必要になります。
「GPはノーリスクで運営だけしたい」という発想とは整合しません。
⑥ 外資比率が過半となる外国法人投資
外国株式等への投資は、既出資額ベースで50%未満制限があります。
日本資本による実質支配等の例外はありますが、いわゆる「純外資」集中型ファンドは、制度上制約を受けます。
まとめ
LPSは優れた制度ですが、
・監査コスト
・事業目的制限
・外国投資制限
・GP設計制約
・金商法との接続
といった構造的制約を内包しています。
実務上重要なのは、
「LPSで組めるか」ではなく
「LPSが最適か」
を検討することです。
制度選択を誤ると、契約書作成後にライセンス・登記段階で設計変更が生じます。
ヴィークル選択は、最初の段階で固める必要があります。

