投資事業有限責任組合(LPS)契約の設計ポイント
利益分配のルール
LPSでは、組合員の出資比率に応じて損益を配分するのが原則です。
ただし実務上は、
- 優先分配条項(まずLPに一定のリターンを配分し、その後GPにキャリーを配分する)
- キャリード・インタレスト条項(GPが一定以上の成果を上げた場合に報酬を得る)
といった仕組みを設けることが一般的です。契約段階で配分方法を明確にしておかないと、将来の紛争リスクに直結します。
業務執行と報告義務
- GPの役割:投資判断、モニタリング、EXIT戦略の決定など、LPSの業務を執行。
- LPの役割:基本的に業務執行には関与せず、定期的な情報提供を受ける。
契約上は、GPに対して四半期ごとの運用報告・財務報告を義務づけるケースが多く、透明性を確保する条項設計が不可欠です。
組合期間の設定
- ベンチャーファンドやPEファンドでは、10年前後を存続期間とし、投資期間と回収期間に分けるのが通例です。
- 契約には延長条項を設け、一定の投資が未回収の場合に期間を延長できるようにするのが実務慣行です。
損益の認識と課税対応
- LPSはパススルー課税であり、組合損益は直接組合員に帰属します。
- 法人LPの場合は、実際に分配を受けなくても期末に持分に応じた損益を計上する必要があり、キャッシュフローと課税のずれに注意が必要です。
- 契約上、分配の時期と方法を明確化しておくことで、投資家側の税務リスクを低減できます。
解散・清算条項
- LPSの解散事由(期間満了、全員の合意、事業目的達成など)を契約に定めることが必須です。
- 清算手続では、残余財産をどの順序で分配するか(債務の弁済→優先分配→残余配分など)を条文化する必要があります。
まとめ
- LPS契約の設計では、利益分配・報告義務・組合期間・課税タイミング・解散清算の各要素を明確にしておくことが、投資家保護とファンド運営の安定に直結します。
- とりわけ、GPとLPの情報格差を埋める報告条項と、キャッシュフローと課税を調整する分配設計が実務上の肝となります。