投資信託・特定目的会社等の開示制度に関する留意事項―SPC・ファンド等の開示における基本原則と実務上の留意点―
投資信託・特定目的会社に関する開示制度の目的(第Ⅳ部4-1)
金融庁は、投資信託や特定目的会社(SPC)などの開示制度について、
その目的を「投資者が対象商品や発行体の実態を的確に把握し、投資判断を行うための情報を提供すること」と明示しています。
これらの発行体は一般事業会社と異なり、事業活動よりも資産運用を主目的とするため、
開示書類では以下の点が特に重視されるとされています。
- 運用資産の内容・評価方法
- 投資対象資産の取得・運用・処分方針
- 受益権・社債などの分配・償還条件
- 運用報酬・手数料・リスク要因
投資信託に関する開示上の留意点(第Ⅳ部4-2)
投資信託の開示書類においては、
「投資対象資産の性質と運用リスクを明確に説明すること」が求められます。
主な留意点は以下のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 投資方針 | 資産運用の目的、投資制限、運用対象の範囲を具体的に示す。 |
| 投資リスク | 市場変動・信用・流動性・為替など、主要リスクを区分して記載する。 |
| 運用体制 | 委託会社・受託会社・販売会社など関係者の役割を明確にする。 |
| 費用・手数料 | 投資者が負担する費用の算出方法と支払時期を説明する。 |
また、過去の運用実績を表示する場合は、
過去の成果が将来の成果を保証するものではない旨の注意記載を要するとされています。
特定目的会社(SPC)の開示上の留意点(第Ⅳ部4-3)
SPC(特定目的会社)に関しては、「特定目的会社法」に基づき設立されるため、
その目的・構造・資金調達方法を明確に説明することが求められています。
具体的には以下の項目が審査対象となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立目的 | 設立根拠法および事業目的を明示する。 |
| 資産内容 | 取得資産の種類(不動産・債権・リース資産等)を詳細に記載。 |
| 資金調達 | 社債・受益権・貸付等による調達の区分、返済原資の明示。 |
| リスク要因 | 借入金依存・金利上昇・テナント解約等のリスクを具体的に説明。 |
| 利益分配 | 分配基準・時期・支払方法を明記。 |
特に、不動産流動化を目的とするSPCでは、テナント構成・賃料収入の集中度・契約期間など、
資産の安定性に関する情報を重点的に開示すべきとされています。
匿名組合出資等を利用するスキームの開示(第Ⅳ部4-4)
匿名組合出資や任意組合出資を利用するスキームについては、
投資者にとって実質的にファンドと同様の性格を持つため、
事業の実態に応じた適切な開示が必要であるとされています。
金融庁は、以下の観点を明確にしています。
- 出資者の権利内容・利益配分の方法を正確に記載すること
- 損失の負担構造(有限責任・無限責任)を明確に区分すること
- 営業者・運用者・販売者の関係を明示すること
- 運用資金の流れと利益配分の算定方法を説明すること
これらの情報が不十分である場合、訂正を求める指導対象となります。
リスク情報の開示(第Ⅳ部4-5)
SPCやファンドにおけるリスク情報の開示については、
投資判断に影響を与える可能性があるすべての要因を具体的に記載することが求められています。
代表的なリスク項目は次のとおりです。
- 市場金利・為替変動・信用不安に伴う資産評価の変動
- 主要投資先・借入先の倒産・契約解除
- 運用報酬・管理費用の増加による収益性への影響
- 取引先・スポンサー企業の信用状況の悪化
これらは抽象的に列挙するのではなく、定量的な開示を行うことが推奨されています。
開示書類の修正・訂正対応(第Ⅳ部4-6)
審査の過程で開示内容に不備が認められた場合は、
有価証券届出書等の訂正を求めるとされています。
特に、以下の事項は重要な訂正対象として明記されています。
- 投資対象資産の内容が不明確である場合
- 資金調達方法の説明が不足している場合
- 匿名組合出資やリース資産など複合スキームの構造が不透明な場合
訂正届出書を提出しても、依然として説明が不十分な場合は、
届出の受理が留保または拒否されることがあります。
投資信託・SPC開示における透明性確保(第Ⅳ部4-7)
金融庁は、投資信託・SPCの開示を通じて次の行政目的を掲げています。
- 投資スキームの透明性を確保し、一般投資家が理解できる水準で情報提供を行うこと
- ファンド運用の適正性・資産保全の実効性を高めること
- 開示制度の国際的整合性(IFRS・IOSCO基準等)を維持すること
まとめ
第Ⅳ部では、
- 投資信託や特定目的会社など、資産運用型スキームの透明な情報開示
- 匿名組合・任意組合・SPC等を用いたスキームのリスク・構造の明確化
- 投資者保護の観点からの具体的・定量的な説明責任
が一貫して強調されています。
これにより、投資信託・ファンド・不動産流動化など多様な商品形態においても、
開示制度全体が統一的に運用されることを目指しています。

