投資助言・代理業とは何か
投資関連ビジネスの相談で最初に必要になるのは、「投資助言・代理業に該当するか」「別の金融商品取引業(第一種・第二種・投資運用業等)の射程に入るか」「そもそも登録不要か」を、業務の実態に即して切り分けることです。
本稿では、金融商品取引法上の位置付けと金融庁資料・監督指針の考え方を踏まえ、登録要否の判断に使える整理枠を示します。
投資助言・代理業は「11号」と「13号」の二類型から成る
投資助言・代理業は、金融商品取引法上、主として次の二つの業務類型で構成されます。
- 投資助言業務(11号業務):投資顧問契約に基づき、分析に基づく投資判断を助言する業務
- 投資顧問契約または投資一任契約の締結の代理・媒介(13号業務):当該契約の成立に向けて代理または媒介を行う業務
金融庁の登録手続ガイドブックは、投資助言・代理業を他の登録種別(投資運用業、一種・二種等)と対比しつつ整理しています。
登録要否は「行為を分断せず総合判断」が基本
登録要否の検討で重要なのは、サービスの見せ方(名称、免責文言、画面表示)ではなく、実際に顧客に提供される行為の内容です。
監督指針では、投資助言業に該当するかは、個別行為を切り分けて判断するのではなく、一連の行為として総合的に判断する旨が示されています。
まず三つに切り分ける:助言/販売(勧誘・媒介)/運用
実務上の初期整理として、次の三つを最初に峻別すると論点が整理しやすくなります。
1. 助言(投資判断の提示)か
銘柄、数量、価格、売買の別、方法、時期など、投資判断の中核に踏み込むほど「助言」に寄ります。
特に、顧客との間で投資顧問契約として対価を受ける構造を取る場合、11号該当性が正面から問題になります。
2. 販売(勧誘・募集/私募取扱い・売買媒介等)か
ファンド持分、投資信託、信託受益権、株式等について、募集・私募の取扱い、売買の媒介、注文の取次ぎ等の行為が含まれる場合、投資助言・代理業では収まらず、第一種・第二種・金融商品仲介業等の射程が生じます。
どの登録が必要かは、対象商品と行為態様によって分岐します。
3. 運用(権限を受けて執行に関与)か
ログイン情報の預かり、取引権限へのアクセス、発注代行等が入ると、投資一任(投資運用業)側に寄ります。
ツール提供・システム連携型サービスでは、この境界が最初に問題化しやすい類型です。
13号「代理・媒介」の射程:商品販売の仲介とは別整理になり得る
13号は、投資顧問契約または投資一任契約の締結についての代理・媒介です。
ここで注意すべきは、一般にイメージされる「商品販売の仲介(募集/私募取扱い等)」とは、法的整理が異なる点です。
金融庁ガイドブック上も、投資顧問・投資一任の契約締結に関する代理・媒介は投資助言・代理業の登録対象として位置付けられています。
登録後に避けて通れない顧客保護・手続の骨格
投資助言・代理業は、登録がゴールではなく、登録後に運用すべき顧客保護・社内体制が実務の中心になります。
関東財務局のQ&Aは、登録後の手続(供託、苦情処理、ADR等)を含めた全体像が整理されています。
登録後の主要論点(例)
- 契約締結前後の書面交付、説明実務
- クーリング・オフ等の解除対応
- 苦情処理・紛争解決(指定ADR機関との関係を含む)
- 営業保証金(供託)等の対応
主要登録の比較(初期検討用)
「どの登録の器か」を最初に当てにいくための比較表です(最終判断は個別事案での行為態様の精査が前提です)。
| 目的・行為 | 主に問題となる登録 | コメント |
|---|---|---|
| 分析に基づく投資判断を、有償で提供 | 投資助言・代理業(11号) | 契約構造と助言内容で該当性が決まる |
| 投資顧問契約/投資一任契約の締結を代理・媒介 | 投資助言・代理業(13号) | 商品販売の媒介とは別整理 |
| 顧客から権限を受けて、執行まで関与 | 投資運用業 | 助言を超えて執行に関与すれば運用側に寄る |
| 有価証券の募集/私募取扱い、売買媒介等 | 第一種/第二種等 | 対象商品・行為態様で分岐 |
SNS・オンラインサロン・サブスク・ツール提供での実務上の注意点
近年は、SNS、オンラインサロン、月額課金、ツール販売など、提供形態が多様です。ここでは「形式」よりも「実態」で評価されます。
- 免責表示や「これは助言ではありません」という文言があっても、実際に投資判断の提示や継続的な対価回収があれば、登録要否は総合判断されます。
- ツール販売であっても、継続課金、投資判断に踏み込むサポート、顧客の発注・権限に接続する設計がある場合、整理が大きく動き得ます。
- したがって、サービス設計段階で「助言の粒度」「対価の構造」「執行関与の有無」を説明可能な形に落とし込むことが、後戻りコストを抑える上で重要になります(当局対応・内部管理・書面実務まで連動するためです)。
相談事例(初期整理の典型)
事例:オンラインサロンで月額課金し、銘柄の売買タイミングを配信したい
月額課金と、銘柄・売買タイミングの提示という設計は、投資判断の助言として投資助言・代理業(11号)の議論に入りやすい類型です。
さらに、特定事業者への送客、口座・権限への接続、発注代行に近い行為が加わると、別登録(第一種・投資運用業等)の検討も必要になります。
最終的には、監督指針が求める「一連行為の総合判断」を前提に、サービス全体の説明可能性を作れるかが判断の分岐点になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 無料配信(無料メルマガ等)なら登録は不要ですか
一般論として、投資顧問契約は対価の約定を含むため、無料のみで完結する場合は直ちに11号に当たらない方向で検討されます。ただし、登録要否は一連の行為を総合判断する枠組みであり、実態として助言提供と対価回収が結びつく設計であれば評価が動き得ます。
Q2. 13号の代理・媒介で、ファンドの募集(私募取扱い)までできますか
13号は投資顧問契約/投資一任契約の締結に関する代理・媒介が中心で、募集・私募取扱い等の「商品販売」領域は、対象商品と行為態様に応じて第一種・第二種等の整理になります。
Q3. 登録後に顧客対応で必ず論点になるものは何ですか
契約締結前後の書面交付、クーリング・オフ等の解除、苦情処理・ADR、営業保証金(供託)などが、運用面の必須論点になりやすいです。
まとめ
投資助言・代理業は、投資判断の助言(11号)と、投資顧問契約/投資一任契約の締結の代理・媒介(13号)を軸に、第一種・第二種・投資運用業等との境界で整理すべき登録種別です。
特にSNS、サブスク、ツール提供型サービスは、名称や表示ではなく、助言内容、対価構造、執行関与の有無を「一連の行為」として説明できる設計になっているかが実務上の分岐点になります。

