投資助言・代理業と単なる情報発信は、どこで分かれるのか
投資関連の情報発信を行う事業者から、「どこまでなら投資助言・代理業に当たらないのか」という相談を受けることが増えています。
背景には、SNS、ブログ、メルマガ、動画配信、オンラインサロンなど、情報発信とビジネスが連続的につながる環境が一般化したことがあります。
本稿では、投資助言・代理業と単なる投資情報発信の境界について、感覚論ではなく制度構造から整理します。
出発点:投資助言・代理業は「投資判断の引受け」を規制する制度
投資助言・代理業は、「投資の話をしてはいけない」制度ではありません。
規制の対象となるのは、投資判断そのものを、契約関係の中で引き受ける行為です。
したがって、登録要否の判断は、
- 投資の話をしているか
ではなく、 - 投資判断を、誰が・どの立場で担っているか
という視点から行われます。
情報発信が「助言」に変わる瞬間
投資情報の発信が、投資助言・代理業として問題になるのは、次の要素が重なったときです。
① 投資判断の要素に踏み込んでいる
具体的には、次のような要素です。
- 投資対象の選定(銘柄・商品・市場)
- 売買の方向性
- 売買の時期
- 投資方法や戦略の選択
これらは、金融商品取引法上「投資判断」の中核を構成します。
一般論や制度解説を超え、これらに体系的に踏み込むと、助言性が問題になります。
② 分析を前提とした「判断」として提示している
単なる事実の紹介やニュースの転載ではなく、
- 分析結果としての結論
- 推奨・否定・方向付け
- 行動を前提とした説明
として提示される場合、情報発信は「判断の提供」に近づきます。
「参考情報です」「意見の一つです」といった断り書きは、
助言性を否定する決定的要素にはなりません。
③ 継続性・体系性がある
単発のコメントではなく、
- 定期的な配信
- サブスクリプション
- カリキュラム化された情報提供
といった形で、投資判断を支える構造が作られている場合、
事業として投資助言を行っていると評価されやすくなります。
④ 対価との結び付きがある
投資助言業務(11号)は、投資顧問契約という対価性を伴う契約を前提とします。
- 月額課金
- 会費
- 情報利用料
などが、投資判断の提供と実質的に結び付いている場合、
「情報提供」ではなく「助言」として整理されます。
無料配信であっても、有料サービスへの誘導構造がある場合には、
一連の行為として評価される点に注意が必要です。
「不特定多数」「一斉配信」は判断を左右しない
投資助言は、個別助言である必要はありません。
- 一斉配信
- 不特定多数向け
- 匿名コミュニティ
であっても、投資判断を体系的に提供していれば、
助言性は否定されません。
実務上、個別相談よりも、むしろ一斉配信型サービスの方が問題になりやすいのが実情です。
情報発信にとどまる典型例
一方、次のような内容にとどまる限り、直ちに投資助言・代理業に該当するとは整理されません。
- 制度・法令・市場構造の解説
- 過去データの客観的整理
- 投資理論・分析手法の一般的説明
- 特定の投資行動を前提としない教育的内容
重要なのは、読者・視聴者の投資行動を前提としていないことです。
実務上の落とし穴:情報発信と助言は「混ざった瞬間」に評価が変わる
多くのトラブルは、
- 情報発信として始めたものが
- ビジネス化の過程で助言に近づいていく
という経路で生じます。
初期設計の段階で問題がなくても、
- 有料化
- 会員制
- 実践的コンテンツの追加
といった変更により、登録要否が変わることは珍しくありません。
まとめ
投資助言・代理業と単なる情報発信の違いは、
- 表現の強さ
- 免責文言の有無
ではなく、
- 投資判断を引き受けているか
- それが契約関係・対価構造の中で行われているか
という制度的な観点で決まります。
投資情報を発信する事業では、
「今は情報発信にとどまっているか」「助言に踏み込んでいないか」を、
サービス設計の節目ごとに再確認することが不可欠です。

