特例届出を出して終わり、になっていませんか?適格機関投資家等特例業務の継続義務とその落とし穴
適格機関投資家等特例業務(いわゆるプロ向けファンド)では、届出制で登録不要という制度設計が採用されています。
しかしそれゆえに、「届出を出した時点で一安心」として運営を放置してしまうケースが後を絶ちません。
この“特例業務=緩い制度”という誤解が、実務上の大きな落とし穴になることがあります。
特例業務でも、届出後に義務はある
制度上、特例業務は「登録不要」である代わりに、次のような義務が課されています
- 事前届出(開始前)
- 業務開始届出
- 業務報告書の提出
- 変更届(構成員、代表者、業務内容など)
これらの義務は、登録制の投資運用業・第二種金融商品取引業と同様、金融商品取引法に基づく実務的な継続管理の対象です。
しかし、特例業務届出後に放置し、業務報告書も提出していなかったという場合、これが処分の対象となっており、たとえ届出を適切に行っていたとしても、その後の義務を果たしていなければ法令違反とされた事例もあります。
実務でありがちな義務違反のパターン
- 業務開始届を出し忘れている
→ 届出書は出したが、実際にファンドが動き出したタイミングを報告していない。 - 構成員(社員・役員)の変更を無届で進めている
→ 適格機関投資家の交代、49名構成の一部変更なども要注意。 - 業務報告書の未提出が続いている
→ 年次報告を怠ると、実態把握不能として当局から調査・指導の対象に。
「特例=軽いスキーム」ではないという現実
適格機関投資家等特例業務は、「登録が不要」というだけであって、無届け・無管理で自由に運営できる制度ではありません。
金融当局は特例届出業者であっても、制度目的に照らして「実質的に問題がある」と判断すれば、処分・警告の対象とすることを明言しています。
届出してからが本番
特例業務は、「一度届出すればそれで終わり」ではありません。むしろ重要なのはその後で、
- 継続的な報告
- 組織変更時の届出
- 人数・出資構成の管理
など、制度趣旨に即した誠実な運営体制の維持が求められます。
放置すれば、「届出していたのに無登録営業」と評価される逆転リスクすらあるのが、この制度の本質です。