特例業務と反社チェックの実務対応、少人数ファンドでも求められる反社会的勢力排除の体制とは
特例業務でも「反社チェック」は必須です
適格機関投資家等特例業務(いわゆる63条業務)は、簡易な届出制度でありながら、出資者を相手とする金融取引に該当します。そのため、一般の金融商品取引業者と同様に、反社会的勢力の排除(いわゆる反社チェック)が求められます。
これは法令上明文で定められているだけでなく、監督指針や行政対応の実務上、不可欠な体制整備事項とされています。
根拠となる法制度・ガイドライン
- 犯罪収益移転防止法(いわゆる犯収法)
- 金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」
- 反社会的勢力の排除に関する政府方針(平成19年閣議決定)
- 金融商品取引法に基づく契約締結前確認義務の一環
これらの制度により、出資者の属性確認・反社会的勢力に該当しないことの確認が、制度運営上の必須事項となっています。
実務で必要な対応内容
【1. 契約前の本人確認】
- 自然人であれば、氏名・住所・生年月日の確認
- 法人であれば、登記事項証明書・代表者の本人確認書類など
- 出資者の実質的支配者に対する確認も忘れずに行う
【2. 反社チェックの実施】
- インターネット検索(代表者氏名+逮捕歴等)による簡易調査
- 有料の反社データベースを活用するのが望ましい
- 反社チェックの実施日時・確認方法を記録に残す
【3. 契約書への反社排除条項の明記】
- 出資契約書に以下のような条項を設けるのが一般的です。
出資者またはその関係者が反社会的勢力に該当する場合には、業務執行者は何らの催告を要することなく本契約を解除することができる。
よくある誤解と注意点
誤解 | 実際には… |
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少人数のセミプロ相手なら不要では? | 人数や属性にかかわらず義務です |
反社チェックは契約後にしても大丈夫? | 契約締結「前」に確認する必要があります |
名義上問題なければ実質は問われない? | 実質的支配者も確認対象となります |
実務的な記録の残し方
- チェック結果は「顧客管理票」または「確認結果記録」の欄に記載
- 本人確認の結果は、取引時確認記録として保存し、契約書その他関係書類とともに一定期間保管する必要あり
- 契約書の控えや本人確認書類の写しとセットで管理すると安心
まとめ
特例業務によるファンド組成は、少人数かつプロ向けの柔軟な制度ですが、反社会的勢力の排除という観点では通常の金融商品取引業者と同水準の対応が求められます。ファンドの信頼性を高め、将来的な監督対応や資金調達のハードルを下げるためにも、反社チェック体制の整備とその記録保存は、規模にかかわらず初期段階から行うべき重要事項です。