組合型ファンド
組合型ファンドとしては、任意組合、匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合等があります。
各々の法人税の税務処理について検討したいと思います。
4つの組合の法的性質
組合と言ってもこの4組合で法的性質は異なります。
法人格
任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合は、法人格を有していません。一方で匿名組合は、法人もしくは個人である営業者の事業に出資するわけで、その営業者は法人格を有することになります。
登記の有無
登記の有無ですと、任意組合と匿名組合は登記出来ず、投資事業有限責任組合と有限責任事業組合は登記を必要としますが、これはあくまでも登記の有無の話であって、法人格とは関係ありません(投資事業有限責任組合契約に関する法律第17条、有限責任事業組合契約に関する法律第8条)
(組合契約の効力の発生の登記)
第十七条 組合契約が効力を生じたときは、二週間以内に、組合の主たる事務所の所在地において、次の事項を登記しなければならない。
一 第三条第二項第一号、第二号、第六号及び第七号に掲げる事項
二 無限責任組合員の氏名又は名称及び住所
三 組合の事務所の所在場所
四 組合契約で第十三条第一号から第三号までに掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由
(登記)
第八条 この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
2 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。
税務上の法人格の有無が重要
税務上法人格の有無が重要になります。法人税法条納税義務書は法人税法で、内国法人等と規定されています(法人税法第4条)。
したがって、株式会社、合同会社等の会社は納税義務者となりますが、任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合は納税義務者とはなりません。
匿名組合は納税義務者になる
法人格を有する匿名組合の営業者は、それが株式会社であろうと合同会社であろうと納税義務者になります(仮に営業者が個人の場合であっても所得税の納税義務者になります。)。
その他は納税義務者にならない
一方法人格を有さない、任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合は、法人税法条納税義務者にはならず、各組合員各々が納税することになります。
第四条 内国法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。ただし、公益法人等又は人格のない社団等については、収益事業を行う場合、法人課税信託の引受けを行う場合又は第八十四条第一項(退職年金等積立金の額の計算)に規定する退職年金業務等を行う場合に限る。
2 公共法人は、前項の規定にかかわらず、法人税を納める義務がない。
3 外国法人は、第百三十八条第一項(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得を有する。
匿名組合は営業者が納税義務者
匿名組合の事業で所得が生じると原則的には営業者である、株式会社や合同会社が課税されます。その場合の課税は通常の法人税の課税なので、所得の35%程度が課税されることになります。
このように所得の35%もの課税がなされた後の利益を匿名組合員に分配するとなると、匿名組合員への分配額は税金分少なくなりファンド形態としては不都合になります。そのため法人税では特別な規定を設けています。
法人税の特別な規定(ペイスルー)
法人税法では匿名組合について、匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益の額は、営業者の税金計算上損金(費用)とすると定めています(法人税法基本通達14-1-3)。
これは、匿名組合において生じた所得について分配前に課税すると組合として税金負担が大きく不都合であるので、匿名組合契約によって匿名組合組合員に分配する金額については、営業者では損金(費用)処理することが可能になり、結果的に営業者の納税負担が減るということになります。
例えば組合の事業で1億円の所得が生じたとします。匿名組合でなければ1億円の35%程度の35百万円の納税が営業者で生じ、残額の75百万円を組合員に分配することになります。しかしながら匿名組合の場合であると、仮に1億円匿名組合員に分配する場合、営業者では所得ゼロ(所得:1億円▲匿名組合分配金:1億円=0)になるため、営業者で納税は発生しません。
このように匿名組合では、納税義務者は営業者となるのですが、匿名組合分配金に関しては、損金(費用)処理するという税務上の規定により、結果としてファンドである匿名組合での課税は生じず匿名組合員が納税するというファンドに適した形になります。一般的にこのような納税方法をペイスルーと呼ばれていたりします。
(法人税基本通達14-1-3)
14-1-3 法人が匿名組合員である場合におけるその匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額については、現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても、匿名組合契約によりその分配を受け又は負担をすべき部分の金額をその計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入し、法人が営業者である場合における当該法人の当該事業年度の所得金額の計算に当たっては、匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益の額又は負担させるべき損失の額を損金の額又は益金の額に算入する。(昭55年直法2-15「三十三」、平17年課法2-14「十五」により改正)
任意組合等の税務処理は「その2」に続きます。
手続きのご依頼・ご相談
本日は組合型ファンドの税務処理について解説いたしました。ファンドの組成設立支援などについては、永田町リーガルアドバイザーまでお問い合わせください。