適格機関投資家等特例業務とは

2023/07/18投資運用業

適格機関投資家等特例業務とは

金融商品取引業の参入障壁

 金融商品取引業は、主に4つのカテゴリーに分けられます。それぞれは「第一種金融商品取引業」、「第二種金融商品取引業」、「投資助言・代理業」、「投資運用業」と呼ばれており、それぞれの業務を実施するには登録が必要です。この登録には専門家への手数料、自主規制団体の会費、登録免許税など、かなりの費用がかかります。また、登録が認められるまでの事前審査、正式な申請手続き、開業までにかかる時間は、業態によって半年から2年程度となります。

 このため、登録要件を満たすための体制整備には人件費が発生します。さらに、審査期間中には、人件費を支払いつつも開業できない状況になります。そのため、金融商品取引業に参入する際のハードルは高いと言えます。

 さらに、登録までの準備期間が長いため、当初投資家として見込んでいた顧客の投資意欲が変わってしまうことがあります。また、事業の前提となる市場環境や事業環境が大きく変わってしまう可能性もあります。これは、再生可能エネルギー関連事業などタイミングが重要な事業において顕著です。

 

適格機関投資家等特例業務

 適格機関投資家等特例業務とは、一定の要件を満たしたファンドが、適格機関投資家と特例業務対象投資家のみを対象に勧誘・運用を行うことができる制度です。適格機関投資家は、証券会社や投資運用業者、純資産5億円以上の投資事業有限責任組合(LPS)、有価証券の残高が10億円以上ある個人や法人などが含まれます。特例業務対象投資家には、国や地方公共団体、日本銀行、金融商品取引業者、上場会社、法人(純資産または資本金5,000万円以上)などが含まれます。

 適格機関投資家等特例業務を利用することで、登録要件や手続き費用の負担を軽減し、より迅速に事業を開始できます。この制度を活用するには、勧誘・運用するファンドが、1名以上の適格機関投資家と49名以下の特例業務対象投資家で構成される必要があります。ただし、細かい例外規定が存在するため、原則としてこの要件を満たすことができれば、適格機関投資家等特例業務届出者として、自己私募と自己運用を行うことができます。

 適格機関投資家等特例業務を利用することにより、開業までの期間や費用を削減し、事業のスピードを上げることができます。特に、市場環境や事業環境の変化が大きな影響を与える業界では、この制度が有効であると言えます。しかし、適格機関投資家等特例業務を利用する際には、適格機関投資家や特例業務対象投資家の条件を満たす必要があるため、注意が必要です。

まとめ

 適格機関投資家等特例業務は、専門家の手続き費用や登録免許税、自主規制団体の会費などの費用負担を軽減し、事業を迅速に開始することができる制度です。ただし、適格機関投資家や特例業務対象投資家の条件を満たすことが必要であり、適格機関投資家等特例業務を利用する際には注意が必要です。この制度を活用することで、金融商品取引業の開業がより容易になり、多様な事業展開が可能となります。

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