適格機関投資家等特例業務(QII特例)の電子届出実務、「金融庁電子申請・届出システム」利用時の注意点と手続フロー
QII特例届出はオンライン化が前提に
近年、金融庁では「金融庁電子申請・届出システム」を通じたオンライン提出が推奨されています。
gBizIDを用いて申請者本人または代理人がログインし、届出書(Excel様式)および添付資料をPDF形式でアップロードする方式です。
コロナ禍以降は、郵送による提出よりも電子届出が一般化しており、金融商品取引法第63条の6第1項の届出(いわゆるQII特例業務の届出)も原則としてオンラインで受理されています。
代理人による届出の入力方法
代理人が届出を行う場合、申請画面で次のような点に注意が必要です。
| 項目 | 実務上の記載例・注意点 |
|---|---|
| 申請者所属 | 「代理人行政書士(本人:〇〇合同会社)」のように、本人名を括弧書きで明示する。 |
| 申請者氏名 | gBizIDに紐づく代理人個人名が自動反映される。本人名には変更できない。 |
| 住所・郵便番号 | 届出者本人の住所ではなく、代理人事務所の所在地を入力する。 |
| 電話番号 | 官公庁からの照会に対応可能な番号を入力。代理人事務所の番号で差し支えない。 |
| 代理人欄 | 「あり」を選択し、氏名を記載。資格名の明示は任意だが、実務上は「行政書士○○」など明記した方が分かりやすい。 |
提出先とドラフトチェック
提出先は届出者の所在地により異なります。
海外業者の場合、管轄は関東財務局理財部証券監督第3課です。
届出書の提出前にドラフトチェック(事前確認)を求められるケースが多く、特に海外発行体の場合は、事前に担当課に電話連絡をしてドラフト版をメール送付し、形式・内容の確認を受けてから正式提出するのが望ましい実務です。
一方、国内業者(東京財務事務所管内等)の場合は、ドラフトチェックを省略できる運用となっています。
添付ファイルの取扱い
届出書(Excel)以外の添付資料は、PDFファイルで個別添付します。
ZIPファイルはシステム上アップロード不可です。複数のファイルを添付する場合は、一つずつ追加する形で登録します。
添付が想定される書類例
- Affidavit(海外業者の場合)
- 登記簿・定款に相当するもの
- 適格機関投資家の出資確認書面
- 出資金の入金証憑
- 日本代表者の登記事項証明書(※オンライン届出では添付不要の場合あり)
日本代表者として法人を指定している場合は、登記簿謄本を添付する代わりに、コメント欄へ会社法人等番号を記載する取扱いが認められています。
コメント欄の活用
コメント欄には、次のような補足記載を行うのが実務上一般的です。
- 「密接関係者からの出資額等を証する書面は後日提出予定」
- 「日本代表者として選任した法人の会社法人等番号:0123-45-678901」
この欄は財務局側の審査上も重要視されるため、後日提出予定の書類や補足説明を明確に記載しておくことが推奨されます。
届出後の流れ
提出完了後、システムから「受付完了通知」メールが自動送信されます。
その後、関東財務局で審査が行われ、「承認通知」→「手続完了通知」の順でメールが届きます。
実務上は、受付完了から承認まで2~5営業日程度かかるケースが多いようです。
公的証明書の電子提出に関する新ルール(令和6年9月20日改正)
2024年9月20日以降、住民票・身分証明書・戸籍謄本等の公的機関発行書類もPDF提出が可能となりました。
ただし、
「不鮮明な場合や確認に支障がある場合には原本送付を求めることがある」
とされており、スキャンデータの品質には注意が必要です。
税・手数料等の納付に関しても、電子納付以外の方法を選んだ場合は、納付書原本の送付を求められることがあります。
実務上の留意点まとめ
| 分類 | 留意点 |
|---|---|
| 代理人申請 | 所属欄に本人名を括弧書きで記載、住所・電話は代理人事務所で可 |
| 添付資料 | zip不可。Excel+PDF形式で個別添付 |
| コメント欄 | 出資証憑提出予定や法人代表者の番号を明記 |
| ドラフトチェック | 海外業者は原則要、国内業者は任意 |
| 公的証明書 | 2024年9月以降はPDF提出可だが画質に注意 |
| 承認までの期間 | 通常2〜5営業日(混雑期は遅延あり) |
まとめ
QII特例届出の電子申請は、従来の紙提出よりも迅速で追跡も容易ですが、入力フォーム上の細かな仕様や添付形式に実務的な癖があります。
特に海外業者の代理届出では、ドラフトチェック・添付ファイル形式・コメント欄記載がポイントです。
財務局の審査対応を円滑に進めるためには、事前確認と形式面の整備が不可欠といえるでしょう。

