5%ルールの「株券等」とは何を指すのか?具体例でわかりやすく解説
大量保有報告書の提出義務は、「株券等」を発行済株式総数の5%以上保有した場合に発生します。
この“株券等”という用語は一見すると単なる「株式」と思われがちですが、実務上は誤解が生じやすい概念です。
今回は、その定義と具体例をもとに、実務に即してわかりやすく解説します。
「株券等」の定義(金融商品取引法第27条の23)
金融商品取引法における「株券等」とは、以下の有価証券をいいます:
分類 | 内容例(具体的な証券) |
---|---|
株券そのもの | 普通株式、優先株式など |
新株予約権証券 | ストックオプション、有償新株予約権など |
新株予約権付社債 | ワラント債(転換社債型新株予約権付社債等) |
信託受益権 | 株式信託など、株式に裏付けられた信託商品 |
これらはいずれも「株式に転換可能・議決権取得可能」な性質を有するため、株券等と扱われます。
実務上の誤解が多いパターン
誤解①:未行使のストックオプションは対象外?
→ 未行使でも対象です。
新株予約権の「保有」段階で5%に達すれば報告義務があります(行使の有無に関係ありません)。
誤解②:議決権のない株式なら対象外?
→ 議決権の有無は関係ありません。
発行済株式総数にカウントされている株式であれば対象となります。
誤解③:貸株しているから自分の保有ではない?
→ 実質的に保有権限を有する場合は、保有とみなされます。
形式的に名義を移しても、返還請求権等がある場合は「株券等保有者」と判断されます。
株券等保有割合の計算方法
【1】潜在株式を含まない通常の計算式(純粋な株式保有)
(自己の株式保有数+共同保有者の株式保有数) ÷ 発行済株式総数 × 100
※この式は、株券等=「株式」のみを保有している場合に適用されます。
【2】潜在株式(新株予約権・転換社債等)を保有している場合
(自己の株式数+自己の潜在株式数) ÷(発行済株式総数+自己の潜在株式数) × 100
※「株式」と「潜在株式」の双方を保有している場合でも合算されます。
【3】共同保有者がいる場合(潜在株式を含めた包括的計算式)
(自己+共同保有者の株式数+自己+共同保有者の潜在株式数) ÷(発行済株式総数+自己+共同保有者の潜在株式数) × 100
【補足事項】
- 「自己名義でない株式」(例:信託口、貸株など)でも、実質的支配があると判断されれば保有株式として計算対象になります。
- 潜在株式とは、行使等によって株式に転換可能な権利(新株予約権、転換社債等)を指します。
- 潜在株式数は、行使可能な状態であれば、保有割合に含めて計算する必要があります(未行使であっても)。
実務におけるチェックリスト
- □ 新株予約権の取得があれば、含めて計算しているか?
- □ 信託形式の株式保有を適切に報告対象に含めているか?
- □ 株券等の一部を売却・譲渡した場合、その反映は正確か?
- □ ワラント債等の転換権も保有割合に影響することを把握しているか?
「株券等」の範囲を正しく理解することで、意図せぬ報告義務の発生や、虚偽記載といったリスクを防止することができます。
大量保有報告制度は、形式ではなく「実質」で判断される制度であるため、専門家の助言を受けながら正確な対応を心がけましょう。
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