GK-TKスキームとは?不動産証券化に用いられる代表的ストラクチャーの仕組みと実務上のポイント
資産を証券化する際、特に不動産や再生可能エネルギー、インフラ設備の分野では、「GK-TKスキーム」という資金調達・投資ストラクチャーが定番となっています。
本稿では、GK-TKとは何か、どのような構造で成り立っているのか、そして実務上どのような点に留意すべきかを、制度上確定している論点を中心に解説します。
GK-TKとは?─合同会社×匿名組合の証券化ストラクチャー
「GK-TK」とは、合同会社(Godo Kaisha、略してGK)が営業者として設立され、投資家がそのGKと匿名組合(Tokumei Kumiai、TK)契約を結び、出資する構造を指します。
構成要素 | 内容 |
---|---|
GK(合同会社) | 資産の保有・運用主体。匿名組合の営業者となるSPC(特別目的会社) |
TK(匿名組合) | 投資家が出資者となり、GKの事業成果に応じて分配を受ける契約形態 |
このスキームは、信託受益権や不動産、再エネ設備、航空機・船舶等の物的資産を対象とした証券化に多用されており、「一案件一SPC」が基本となります。
GKが用いられる理由とは?
証券化スキームでSPCとして株式会社ではなく合同会社が選ばれる理由は以下のとおりです。
- 設立費用が安価(登録免許税6万円)
- 社内機関設計が柔軟(定款自治)
- 資本金要件が低く(10万円程度が多い)、迅速な設立が可能
実務上は、定款の変更権限を社員に限定することで、合同会社が「特別目的会社(SPC)」として認定される運用がされています。
TK出資の法的位置づけと投資家の権利
匿名組合契約は商法に基づく民事上の契約であり、TK出資者(投資家)は営業者であるGKの事業に対し出資し、損益分配を受けます。
ただし、TK出資者は会社法上の株主ではなく、原則として意思決定権は持たないため、議決権や資産の直接管理権はありません。
また、TK出資の収益は原則として雑所得・総合課税の対象となるため、個人投資家への課税優遇は基本的にない点も注意が必要です。
ライセンスは原則必須:第二種金融商品取引業・投資運用業の関与
GK-TKスキームにおける匿名組合持分は「みなし有価証券」とされ、私募の取扱いや自己募集には原則として「第二種金融商品取引業の登録」が必要です。
また、出資対象が信託受益権である場合は、その運用に「投資運用業の登録」も必要になります。
例外的に、以下のようなケースでは登録を回避できる場合があります。
- 投資家が適格機関投資家等に限定されている
- 「適格機関投資家等特例業務届出」による制度利用が認められる範囲内である
倒産隔離と親会社の構造設計
証券化においては、スキームの発起母体であるオリジネーターの倒産がSPCに波及しないようにする「倒産隔離(リミテッド・リコース)」が重視されます。
このため、近年では、SPCの親会社として一般社団法人(非営利法人)を設立し、中立的第三者による統治・資本構成とすることで、倒産隔離効果を高める設計(いわゆる「GKTK-SH」)が一般化しています。
ファンド資産の分別管理義務
第二種金融商品取引業者や投資運用業者が関与するGK-TKスキームでは、投資家からの出資金と営業者の固有資産を分別管理する義務があります(金融商品取引法第40条の3ほか)。
- ファンド資金は専用口座で管理
- GKの法人経費用口座とは明確に分離
- 分別管理が実務に乗るよう、資本金を100万~200万円に設定する例も多い
まとめ:GK-TKは制度知識と専門支援が不可欠なスキーム
GK-TKスキームは、アセットファイナンスの世界では非常に一般的かつ実績豊富なスキームです。
しかし、その活用には以下のような要件・注意点が存在します。
- 金融商品取引業のライセンス体制
- 適格投資家向けの勧誘制限
- SPC構造と倒産隔離設計
- 税務・会計・契約法務を含むドキュメンテーション対応
永田町リーガルアドバイザー株式会社では、GK-TKスキームの組成・届出・契約設計など、各種専門家と連携して総合的に支援しております。
スキーム導入をご検討の企業様は、ぜひ一度ご相談ください。