LPSと適格機関投資家等特例業務「届出で足りる」の誤解を整理する
投資事業有限責任組合(LPS)を組成する際、
もっとも誤解されやすいのが、
「適格機関投資家等特例業務なら、登録不要で簡単にできる」
という理解です。
確かに、金融商品取引法第63条に基づく適格機関投資家等特例業務(いわゆる63条業務)は、第二種金融商品取引業や投資運用業の登録を要しない制度です。
しかし、「登録が不要」=「規制が軽い」ではありません。
本稿では、LPSを63条業務で組成する場合に、実務上問題となりやすい論点を整理します。
1. 63条業務の基本構造
適格機関投資家等特例業務は、
- 適格機関投資家(1名以上)
- 適格機関投資家以外の投資家(49名以下)
という人数構造のもとで、
届出によりファンドの自己私募・自己運用を可能とする制度です。
ここで重要なのは、人数制限は単純ではないという点です。
2. 二層構造(ファンド・オブ・ファンズ)の人数カウント
LPSが他のファンドに出資する場合、
いわゆる二層構造となります。
この場合、
- 上位ファンドの投資家数
- 下位ファンドの投資家数
を合算して検討する必要がある場面があります。
特に、
- 下位ファンドが特例業務で組成されている場合
- 投資家が重複している場合
は、49名制限との関係で精査が必要です。
「上は49名以内だから問題ない」という単純整理はできません。
3. 密接関係者の出資比率
特例業務では、
GPの親会社・子会社等の密接関係者の扱いが問題になります。
密接関係者が出資する場合、
ファンド全体の出資総額の2分の1未満である必要があります。
つまり、
- GP支配下の法人をLPに入れる
- 関連会社を適格機関投資家枠として利用する
といった設計は、形式的に可能でも、
実質判断で問題視される可能性があります。
4. 「唯一の適格機関投資家」問題
実務で見られる構造として、
- GPが支配する法人を唯一の適格機関投資家とする
- その他は一般投資家
という設計があります。
しかし、この場合、
- 実質的に特例制度の趣旨を潜脱していないか
- 適格機関投資家が形式的存在にすぎないのではないか
という観点から、監督指針との整合性が問題になります。
63条業務は「形式要件充足」だけで完結する制度ではありません。
5. 再投資先の適法性確認義務
LPSが他のファンドに投資する場合、
- 相手方が登録業者か
- 特例業務届出者か
- 運用を登録投資運用業者に委託しているか
といった点を確認しなければなりません。
違法ファンドに再投資していることが発覚すれば、
善管注意義務違反として行政処分の対象となり得ます。
63条業務だからといって、
再投資先の適法性確認義務が軽減されるわけではありません。
6. 届出後の継続義務
特例業務は「届出制」です。
しかし、届出後も、
- 事業報告書の提出
- 説明書類の縦覧
- 投資家への報告義務
- 利益相反管理
などの継続義務があります。
登録業者と比較して義務がゼロになるわけではありません。
結論
LPSを適格機関投資家等特例業務で組成する場合、
- 人数制限
- 二層合算
- 密接関係者比率
- 実質的適格機関投資家の存在
- 再投資先の適法性
- 継続報告義務
といった論点を横断的に整理する必要があります。
重要なのは、
「登録を回避する制度」ではなく
「限定的な条件下で認められる制度」
であるという理解です。
LPSは器にすぎません。
その器をどのライセンスで使うのか。
設計段階での整理が、後工程の安定性を決めます。

