LPSにおける監査義務は回避できるのか?投資事業有限責任組合のコスト構造を条文から整理
投資事業有限責任組合(LPS)は、株式会社や合同会社とは異なる組合型ヴィークルです。
しかし、「組合だから軽い」という理解は正確ではありません。
LPS法は、財務諸表の作成および監査に関して明確な義務を定めています。
本稿では、LPSの監査義務と実務上のコスト構造を条文ベースで整理します。
1. LPSの財務諸表作成義務
LPS法は、無限責任組合員(GP)に対し、
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 業務報告書
- これらの附属明細書
を毎事業年度終了後3か月以内に作成することを義務付けています。
これは任意組合とは異なる、LPS特有の明文化された義務です。
2. 公認会計士または監査法人の意見書
さらに、これらの財務諸表等には、
公認会計士(外国公認会計士を含む)または監査法人の意見書
を添付しなければならないとされています。
つまり、LPSは制度上、監査を前提としたヴィークルです。
3. 書類の備置・閲覧請求権
作成した財務諸表等および意見書は、
- 主たる事務所に5年間備え置く義務
- 組合員および債権者の閲覧・謄写請求権
が認められています。
したがって、監査は単なる形式的要件ではなく、
情報開示制度の一環として組み込まれています。
4. 清算中の取扱い
実務上誤解されがちなのが、清算段階です。
LPSは、清算手続中については、
必ずしも監査を受けることが義務付けられていません。
もっとも、清算に至るまでの各事業年度については、
監査義務は原則として発生します。
5. コスト構造への影響
監査義務は、LPSのスキーム選択に直接影響します。
一般に、
- 小規模ファンド
- 短期運用予定のファンド
- 単発案件型のファンド
では、監査コストの負担割合が相対的に高くなります。
LPSは制度設計上、
VC・PEのような中長期投資を想定した構造と整合的です。
6. 「監査を回避する設計」は可能か
結論として、
LPSである以上、監査義務は制度上組み込まれている
ため、
通常運用期間中に監査を完全に回避する設計はできません。
監査を避けたいのであれば、
ヴィークルそのものを再検討する必要があります。
まとめ
LPSは、
- 財務諸表作成義務
- 公認会計士または監査法人の意見書
- 備置義務
- 閲覧請求制度
を制度上内包しています。
したがって、
「組合だから軽い」
という発想は適切ではありません。
スキーム選択において重要なのは、
- 投資規模
- 投資期間
- 投資家構成
- コスト負担能力
との整合性です。
LPSは優れた制度ですが、
監査義務を含む制度設計を理解したうえで採用すべきヴィークルです。

