NAGATACHO LEGAL ADVISOR

ご相談・ご依頼

FORMお問い合わせフォーム

FORM

コーポレートファイナンス

フィナンシャル・アドバイザリー
適時開示・IRサポート

コンプライアンス・規制対応支援

不正調査対応業務
    法定開示書類作成・提出代行(EDINET対応)

    ファンド組成・管理業務

    ファンド組成支援
    有限責任事業組合(LLP)
    投資事業有限責任組合(LPS)
    任意組合(NK)
    匿名組合(TK)
    第二種金融商品取引業
    ファンド管理業務

    適格機関投資家等特例業務

    適格機関投資家届出業務
    適格機関投資家等特例業務届出

    M&Aにおける大量保有報告書の提出義務とは

    1.大量保有報告制度の趣旨

    上場会社の株式を5%超取得する行為は、企業支配や株価形成に重大な影響を及ぼす可能性があります。
    金融商品取引法では、こうした支配変動を早期に市場へ開示することで、投資者保護と市場の透明性確保を図る趣旨から「大量保有報告制度(いわゆる5%ルール)」を設けています。

    上場会社自身ではなく、株式を取得した投資家側(取得者)に報告義務を課す点が制度上の特徴です。
    M&Aや公開買付(TOB)などにおける初期段階の株式取得でも、取得割合が5%を超えた時点で、自らの名義または共同保有分を含めて報告義務が発生します。

    2.提出義務の発生要件(金融商品取引法第27条の23)

    (1)提出義務者

    日本の金融商品取引所に上場する会社の「株券等」(株式・新株予約権証券・新株予約権付社債券など)を5%を超えて保有する者は、保有割合が5%を超えた日から5営業日以内に、所管の財務局長宛てに大量保有報告書を提出しなければなりません。

    提出義務の対象は「会社」ではなく、あくまで株式を取得した株主本人です。
    M&A担当者が取得スキームを構築する際は、この5営業日のカウントを誤らないよう留意が必要です。

    3.変更報告・訂正報告の義務(法第27条の25)

    大量保有報告書提出後、以下の場合には変更報告書または訂正報告書の提出が必要となります。

    報告区分提出事由提出期限
    変更報告書(1) 株券等保有割合が1%以上増減した場合
    (2) 氏名・住所・保有目的等の記載事項に変更があった場合
    変更日から5営業日以内
    訂正報告書提出済の報告書に誤記・誤算が判明した場合判明後遅滞なく

    4.株券等保有割合の算定方法

    算定式は以下の通りです(潜在株式数を含む点に注意)。

    (自己+共同保有者の保有株式・潜在株式) ÷(発行済株式総数+自己・共同保有分の潜在株式)

    「潜在株式」とは、新株予約権等、将来的に株式に転換され得る権利を指します。
    M&Aスキームにおいて新株予約権や転換社債を取得する場合は、現時点での保有割合に潜在株式分を含めて計算しなければなりません。

    5.共同保有者の範囲と留意点

    共同保有とは、共同して株式の取得・譲渡・議決権行使を行う合意関係を指します。
    以下の関係者は共同保有者とみなされます。

    • 共同投資契約等に基づき意思決定を共有する者
    • 夫婦など実質的に一体とみなされる関係者
    • 親会社(支配株主)と子会社(被支配会社)
    • 同一支配下にある複数の子会社

    実務上は、投資ファンドの複数ビークル(SPC)間で意思決定を共有している場合、共同保有関係の有無を慎重に整理することが求められます。

    6.提出期限と提出方法

    提出期限は、報告義務発生日の翌日から起算して5営業日以内です。
    休日・祝日を除くため、実際のカウントは注意が必要です。

    提出はすべて電子開示システムEDINET上で行い、書面提出は認められていません。
    EDINET利用には事前の利用者登録(ID・パスワード取得)が必須となります。

    7.写しの送付義務(法第27条の27)

    提出者は、大量保有報告書または変更報告書を提出した場合、遅滞なくその写しを以下に送付する必要があります。

    • (1) 株券等の発行会社
    • (2) 当該株式を上場する金融商品取引所

    この送付義務は電子提出により代替されないため、郵送または適正な方法での写し送付を怠ると形式違反となります。

    8.公衆縦覧と情報開示の影響

    提出された大量保有報告書は、EDINET上で5年間公衆縦覧されます。
    誰でも閲覧可能であり、投資家やメディアが買収動向を把握する重要な情報源です。
    したがって、M&A戦略上は「報告書提出=買収意図の開示」となることを踏まえ、タイミングや記載内容を戦略的に設計する必要があります。

    9.違反に対する制裁(課徴金・刑事罰)

    区分適用条文内容制裁内容
    課徴金金商法第172条の7・8提出遅延または虚偽記載株券等時価総額の10万分の1(例:時価総額1,000億円→課徴金100万円)
    刑事罰金商法第197条の2提出義務違反・虚偽記載5年以下の懲役または500万円以下の罰金、または併科

    虚偽記載や提出遅延は、単なる形式違反にとどまらず投資者の信頼を損なう重大な法令違反とされます。
    過去には上場企業のM&A関連取引で虚偽記載により課徴金処分を受けた例もあり、実務責任者レベルでのコンプライアンス管理が必須です。

    10.M&A実務における留意点まとめ

    • 株式取得が5%を超えた時点で報告義務が生じる(取得目的を問わない)
    • 共同保有の有無を正確に把握する
    • EDINET提出は5営業日以内、期限管理を厳格に
    • 買収フェーズに応じた提出内容(保有目的欄の記載)を戦略的に検討
    • 法務・財務・IR部門が連携し、開示対応フローを事前に整備

    参考条文

    • 金融商品取引法第27条の23(大量保有報告書)
    • 同法第27条の25(変更・訂正報告書)
    • 同法第27条の27(写し送付)
    • 同法第172条の7・8(課徴金)
    • 同法第197条の2(刑事罰)

    大量保有報告書提出代行業務に関するお問い合わせ

    上場会社の株式を5%超取得した場合には、金融商品取引法第27条の23(いわゆる「5%ルール」)に基づき、大量保有報告書(通称:大保報)の提出が義務付けられています。
    当事務所では、大量保有報告書・変更報告書の作成およびEDINET提出代行業務を承っております。
    提出義務が生じた場合や、保有割合の計算・共同保有の該当判断に迷われた際は、お気軽にご相談ください。