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    QII特例業務の「実務負荷」をどう見極めるか、制度の前提・届出項目・継続義務の整理

    1.QII特例の対象

    ファンド持分の募集や運用は、本来は第二種金融商品取引業や投資運用業の登録が必要になります。
    ただし、適格機関投資家が関与する特定のスキームでは、金商法63条に基づき、登録を行わずに業務を進めることが可能です。

    この仕組みが、いわゆる適格機関投資家等特例業務(QII特例)です。
    対象となるのは、

    • 出資者がすべて適格機関投資家である場合、または
    • 適格機関投資家を含み、49名以下の一定の者を含む場合
      と定められています(施行令17条の12)。

    ただし、特例であっても財務局への届出は必須で、制度を利用するには一定の前提条件が存在します。

    2.届出内容に求められる情報量

    届出書には、事業者の基本情報から組織体制、業務実施場所、ファンドの概要まで、広い範囲の項目が含まれます。
    記載事項は金商法63条2項および業府令238条に整理されており、主として以下の内容が求められます。

    • 商号・名称
    • 資本金や出資総額(法人の場合)
    • 役員や使用人に関する情報
    • 業務の種別
    • 主たる営業所および特例業務を行う拠点
    • 他の事業内容
    • ファンドの名称・種別・内容など内閣府令で定める事項

    制度利用前に、事業者情報とファンド情報の双方を整理できていることが前提になります。

    3.添付書類は提出のタイミングが実務上の論点

    添付書類には、適格機関投資家が投資事業有限責任組合である場合の書面や、密接関係者・知識経験者の出資額を示す資料が含まれます(63条3項、業府令238条の2)。

    これらの書類は、投資者が確定していない段階では揃わないことがあります。
    制度上は、やむを得ない事由がある場合、届出後に遅滞なく提出することが認められています。
    実務でも、数か月後の提出が受理されることは少なくありません。

    4.特例を使っても残る行為規制

    届出を行っても、すべての規制が外れるわけではありません。
    適格機関投資家等特例業務には、金商法63条11項により、投資者保護に関する主要な行為規制が継続して適用されます。

    代表的なものには、

    • 告知義務
    • 誠実義務
    • 名義貸し禁止
    • 広告規制
    • 契約前後の書面交付
    • 虚偽・不当勧誘の禁止
    • 損失補塡の禁止
    • 適合性原則
    • 分別管理関連規制
    • 善管注意義務
    • 運用報告書の交付
    • 暗号資産の性質説明に関する義務

    などが含まれます。

    登録不要である一方で、投資勧誘や管理の基本原則は維持されるという点が制度の特徴です。

    5.届出後に求められる一連の報告義務

    特例業務の継続には、届出後の義務も伴います。

    ● 公衆縦覧書面

    届出後、速やかに所定様式(業府令別紙様式第二十号の二)に基づき作成し、営業所で備置するか、ウェブサイト等で公表します。

    ● 事業報告書

    毎事業年度終了後3か月以内に提出します(63条の4)。
    内容は幅広く、記載準備に時間がかかることがあります。

    ● 説明書類

    毎事業年度終了後4か月以内に備置または公開が必要です。
    外国業者については縦覧期限延長の制度があります。

    ● 変更届

    届出事項に変更が生じた場合は、遅滞なく提出する必要があります。
    実務上は概ね1か月以内が目安です。

    6.QII特例を扱う際の着眼点

    QII特例は、投資家層を限定することを前提に、登録義務を外す仕組みですが、

    • 必要となる記載事項の範囲
    • 添付書類の準備
    • 継続的な報告・公開
    • 一部の行為規制の存続

    など、制度の運用には一定の負荷が伴います。

    このため、制度の枠組みを正確に理解し、期限管理や書面整理を適切に行うことが不可欠です。