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            【事例解説】外国法人による大量保有報告の落とし穴

            報告漏れ・虚偽記載のペナルティと実際にあった違反事例とは?

            はじめに

            前回のコラムでは、外国法人が日本で上場株式を5%超取得した際の「大量保有報告書(5%ルール)」提出義務についてご説明しました。
            今回はそれをさらに実務レベルに落とし込み、過去に実際にあった報告違反の事例や、金融庁が公表した課徴金処分の内容をもとに、外国法人のリスクと教訓を整理します。

            1. よくある報告違反の類型

            (1)提出遅延・提出漏れ

            取得日から5営業日以内に報告書を提出しなかったケース
            海外ファンドに多く、現地での内部確認や翻訳・EDINET操作の遅れが原因となることも。

            (2)虚偽記載

            報告書に記載した保有目的、共同保有関係、議決権割合などに虚偽がある場合。
            とくに「単なる純投資」と記載しながら、実際には経営関与の意図があった場合などは、重大な虚偽と判断される可能性があります。

            (3)実質的保有関係の過小評価

            複数のSPCを利用して間接保有している場合でも、支配関係や共通支配者の存在によって、形式的には別法人であっても共同保有者とみなされることがあります。

            2. 実際の行政処分・課徴金事例

            事例①:香港系ファンドによる未提出(2020年 公表)

            • 概要:香港に本拠を置く投資ファンドが、ある日本の上場企業の株式を6.3%まで取得したにもかかわらず、報告書を提出しなかった。
            • 処分:課徴金約480万円が金融庁より命令。
            • 教訓:外国籍であっても「知らなかった」は通用せず、事務処理の不備も法令違反として扱われる

            事例②:米国投資会社による虚偽記載(2021年)

            • 概要:アクティビスト投資家として知られる米国系ファンドが、日本企業の株式を保有するにあたって「純投資」と記載。しかし、実際には株主提案・取締役選任の意図あり
            • 処分:虚偽記載により課徴金8,000万円超。
            • 教訓保有目的の記載は抽象的表現でも厳格に評価される。
               特に「重要提案行為」に該当するか否かの判断は、社外発言・IR活動も参照されます。

            事例③:共同保有関係の不記載(2022年)

            • 概要:同じ投資グループ内の2つのSPC(いずれもケイマン籍)が、それぞれ保有していた株式を単独保有として報告。しかし実際には同一マネジメント会社が実質的に統括していた。
            • 処分:共同保有関係の不記載により課徴金1,200万円。
            • 教訓SPCスキームを用いた持株であっても、支配構造の全体像で判断される。

            3. 金融庁の姿勢と今後の動向

            近年、金融庁および証券取引等監視委員会(SESC)は、アクティビスト対策や情報開示強化の観点から外国法人の開示姿勢を注視しています。

            • 外国法人=規制の“盲点”とならないよう厳格運用
            • 記載ミスであっても軽微とは扱われない傾向
            • EDINET提出代理人のチェック責任も問われることがある

            4. 実務上の対策

            • 取得前の「保有比率シミュレーション」を徹底
               出資形態やSPC構造を把握し、5%到達のタイミングを事前に把握しておく。
            • 「純投資」記載の際は証拠との整合性を保つ
               実態が「経営関与」に近い場合は、あいまいな記載は避ける。
            • 提出代理人と事前に連携し、期限管理・様式確認を行う
               EDINET提出経験が豊富な司法書士・弁護士等との連携が不可欠です。

            まとめ

            大量保有報告書は、「提出すればよい」という形式的な手続きにとどまらず、その中身(保有目的や共同保有の実態)に対する解釈が厳しく問われる制度です。特に外国法人による誤認や処理遅延は、課徴金や企業イメージへの悪影響にも直結します。

            投資スキームの透明性と、制度に基づいた適切な報告体制の整備は、これからの外国法人投資にとって不可欠です。