企業の成長や経営戦略の一環として、株式併合は重要な手法の一つとして広く利用されています。この記事では、特別支配株主の株式等売渡請求と株式の併合の比較について解説します。
導入された背景
平成26年の改正会社法施行後の現在、スクイーズアウト手法としては、株式公開買い付け(TOB)の後に、株式等売渡請求(会社法179条)または株式併合(会社法180条)といった手続きを採用するケースが主流になっています。
平成26年の会社法改正前までは、今回ご紹介する特別支配株主の株式等売渡請求・株式併合の2つの方法が、スクイーズアウトに反対する株主を保護できなかったため、一般的ではありませんでした。
保護できていなかった理由としては、平成26年改正前も、併合比率を極端におおきくした株式併合が名文で禁止されていたわけではないのですが、少数株主への救済が十分ではないため、キャッシュアウト目的による株式併合決議は資本多数決の濫用等の問題が生じると考えられていました。
特別支配株主の株式等売渡請求(会社法179条)
- 概要
特別支配株主(株式会社の総株主の議決権を90%以上保有する株主)が他の株主の全株式を買い取ることを請求できる手法になります。
- 手順
特別支配株主が全株主に対し、株式等売渡請求を行い、株主がこれに同意することで実行される。これは、対象会社における株主総会決議を要せず、取締役会決議により決定する事ができます。
- 特徴
主に買収や統合の際に利用され、手続きが比較的スムーズです。
株式の併合(会社法180条)
- 概要
複数の株主の株式を一つの株式にまとめる手法になります。
- 手順
企業が、株主に対して株式併合に関する通知を行い、株主総会の特別決議が必要になります。
- 特徴
買収や統合以外にも企業の合理化や持株会社化などにも利用され、手続きに多少手間がかかります。
比較と選択のポイント
- 手続きの複雑さ
株式の併合の方が、特別支配株主の株式等売渡請求よりも手続きが煩雑になります。
- 株主の同意の必要性
株式併合では、株主総会の特別決議が必要ですが、株式等売渡請求では必ずしも必要ではありません。しかし、株式等売渡請求では、議決権の90%以上を取得していなければなりません。
- 実行の目的
買収や統合を目的とする場合は、株式等売渡請求が選択されることが多いですが、企業の合理化や持株会社化を目指す場合は株式の併合が選択されることもあります。
- ポイント
議決権の90%以上を取得できている場合は、特別支配株主の株式等売渡請求(会社法179条)の採用が可能となり、議決権の90%以上を取得できていない場合、株式の併合(会社法180条)の採用が)の検討ができると思われます。
まとめ
特別支配株主の株式等売渡請求と株式の併合は、企業のスクイーズアウト手法として重要な役割を果たしており、どちらの手法を選択するかは、実行の目的や手続きの複雑さ、株主の同意の必要性などを考慮してケースによって慎重に判断する必要があります。
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