企業が成長を加速するためには、優秀な人材を確保し、モチベーションを高める施策が不可欠です。その一つとして、ストックオプションの発行が効果的です。ストックオプションは、従業員や役員等に対して将来的な株式取得の権利を付与する制度であり、企業の成長とともに従業員の利益も増大する仕組みです。本コラムでは、ストックオプションの行使価額の考え方や時価評価額の算定における重要なポイントについて解説します。
ストックオプションの概要
行使価格の考え方については、税制適格(無償)ストックオプションの行使価格は、純資産価額以上(または時価評価額以上)とする必要があります。これにより、株主の価値が既存の株主にとって希薄化するリスクを最小限に抑えます。
一方、有償ストックオプションの行使価格は、時価評価額以上とする必要があります。これにより、オプション付与時点での時価を反映した価格設定が行われます。
時価評価額の算定方法について
- 株式の売買事例がある場合
直近で株式の売買事例がある場合、その売買価格が時価評価額として参考になります。この売買価格を基に行使価格を設定することが一般的です。
ただし、売買が少量であったり、特定の取引条件がある場合は、その価格が公正な時価評価額か慎重に判断する必要があります。
※特定の取引条件について例をあげますと、親族間取引が挙げられるかと思われます。 例えば、経営者が親族に株式を低価格で売却する場合、その価格は公正な時価評価額とは言えません。
- 売買事例がない場合
売買事例がない場合には、以下の方法等で時価評価額を算定します。
1. 純資産価額法
会社の純資産を基に評価する方法です。特に資産が重要な役割を果たしている企業に適しています。
2. 類似企業比較法
同業他社の株価や業績を参考にして評価する方法です。同業他社の株価倍率(P/Eレシオ、P/Bレシオなど)を利用して、対象企業の評価を行います。
3. DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
将来のキャッシュフローを予測し、それを現在価値に割引いて評価する方法です。これは、将来の収益力を重視した評価方法で、特に成長企業に適しています。 これらの方法を組み合わせることで、公正な時価評価額を算定し、それに基づいて有償ストックオプションの行使価格を設定します。
まとめ
ストックオプションは、企業の成長を支援し、優秀な人材の確保とモチベーションの向上に寄与する重要な制度です。その効果を最大限に引き出すためには、適切な行使価格の設定が不可欠です。本コラムでは、税制適格ストックオプションの行使価格の考え方や時価評価額の算定方法について解説しました。企業は、自社の状況や市場環境に応じて適切な評価方法を選択し、従業員と企業双方に利益をもたらす制度設計を行うことが重要です。また、株主の利益を守るため、公正な評価を行うことが求められます。ストックオプション制度を活用し、企業の持続的な成長を目指しましょう。
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