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内部通報制度の問題点とは?公益通報者保護法改正(2026年施行)を踏まえた企業実務

企業不祥事の多くは、内部からの情報提供を契機として発覚します。
そのため、従業員等が不正行為を通報できる仕組みである内部通報制度(公益通報制度)は、企業のコンプライアンス体制において重要な位置を占めています。

日本では、2006年に公益通報者保護法が施行され、その後の改正により制度整備義務が強化されてきました。特に2022年改正では、従業員301人以上の事業者に内部通報体制の整備が義務付けられ、通報対応従事者の指定など具体的な運用ルールが求められるようになりました。

さらに、2025年の改正(2026年施行予定)では、通報者保護の強化や企業に対する罰則導入など、制度の実効性を高めるための追加措置が盛り込まれています。

もっとも、制度が存在していても実務上は様々な問題が指摘されています。本稿では、企業実務で典型的に見られる内部通報制度の課題を整理します。

内部通報制度とは何か(制度の基本)

内部通報制度とは、企業内部で発生した法令違反や不正行為について、従業員等が企業内部または外部の窓口へ通報できる仕組みです。

公益通報者保護法では、一定の要件を満たす通報について、通報者に対する解雇その他の不利益取扱いを禁止しています。

企業に求められる主な体制整備は次のとおりです。

項目内容
通報窓口の設置社内または外部の通報窓口を設ける
通報対応従事者の指定通報対応を行う担当者を明確化
通報者保護通報を理由とする解雇・不利益取扱いの禁止
秘密保持通報者の情報管理

これらの制度を整備しても、運用が不十分であれば制度は十分に機能しません。

内部通報制度の主な問題点

1 制度の認知不足

多くの企業で見られる問題が、制度の存在自体が十分に周知されていないという点です。

通報制度があっても、

  • 通報窓口がどこか分からない
  • 匿名通報が可能か分からない
  • 通報した後の流れが分からない

といった状況では、従業員は制度を利用しません。

このため、企業には

  • 社内研修
  • 就業規則への明記
  • 社内ポータルでの案内

などを通じた継続的な周知が求められます。

2026年施行予定の改正では、制度内容の周知がより明確に求められる方向となっています。

2 制度に対する信頼性の欠如

制度があっても、従業員が

「通報しても会社が握りつぶすのではないか」

と考えている場合、内部通報は機能しません。

信頼性を損なう原因として、次のような点が指摘されています。

  • 通報窓口が人事部など経営寄りの部署にある
  • 通報後の調査結果が共有されない
  • 過去の通報事例が不透明

このような状況では、従業員は通報よりも外部告発やSNS発信を選択する可能性があります。

そのため実務では

  • 外部弁護士窓口の設置
  • 監査役・取締役会への報告
  • 匿名通報の受理

など、独立性を確保する設計が重要とされています。

3 通報者への報復リスク

内部通報を阻害する最大の要因は、報復への不安です。

例えば次のようなケースが問題となります。

  • 人事評価の引き下げ
  • 配置転換
  • 職場での嫌がらせ

公益通報者保護法では、通報を理由とする解雇などの不利益取扱いは禁止されています。

さらに2026年施行予定の改正では、

  • 通報後一定期間の解雇等の推定規定
  • 企業に対する罰則
  • 通報者探索の禁止

など、保護措置が強化される予定です。

4 制度の形骸化

企業によっては、内部通報制度が形式的に設置されているだけという場合もあります。

典型的には次のような状態です。

  • 通報件数が長期間ゼロ
  • 社内規程が更新されていない
  • 担当者が不明確

制度は設置するだけでは意味がなく、定期的な運用評価が必要です。

改正法では、

  • 内部通報体制の評価
  • 必要に応じた改善

などが企業に求められています。

5 通報後の調査体制の不備

通報を受け付けても、その後の調査が不十分であれば問題解決にはつながりません。

典型的な問題として次の点が挙げられます。

  • 調査開始が遅れる
  • 関係者ヒアリングが不足する
  • 調査担当者の権限不足

また、通報対象が経営層である場合には、社内調査のみでは客観性を確保できないこともあります。

このようなケースでは

  • 外部弁護士
  • 第三者委員会
  • 外部調査機関

などを活用することが検討されます。

2026年施行予定の公益通報者保護法改正のポイント

2026年施行予定の改正では、制度の実効性を高めるため、次のような措置が予定されています。

改正内容概要
通報者保護の強化不利益取扱いに関する推定規定
罰則の導入企業・個人への制裁措置
通報妨害の禁止通報者探索などの禁止
周知義務の明確化制度内容の社内周知

これにより、内部通報制度は単なる企業の任意制度ではなく、法的コンプライアンス体制の一部としての性格が一層強まると考えられます。

まとめ

内部通報制度は企業統治の基盤

内部通報制度は、不正の早期発見と企業ガバナンスの維持において重要な役割を果たします。

もっとも、制度を設置するだけでは十分ではなく、

  • 周知
  • 独立性
  • 通報者保護
  • 調査体制

といった要素を適切に整備しなければ実効性は確保できません。

2026年施行予定の改正公益通報者保護法では、企業の体制整備義務がさらに強化される見込みです。企業としては、制度の形式的整備にとどまらず、実際に機能する内部通報体制の構築が求められます。

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