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    匿名組合(TK)を「法律×実務×税務」で立体把握する、事業型ファンドの“デフォルト”を正しく使いこなす

    1. 匿名組合とは?定義と当事者

    匿名組合(TK)は、出資者(匿名組合員)が営業者の「営業」のために出資し、その営業から生ずる利益の分配を約して成立する二者間契約です(商法第535条)。匿名組合員は対外的権利義務を負わず、原則として表に出ないのが制度設計の要点です。e-Gov 法令検索

    実務ポイント
    ・契約は営業者×各出資者の1対1が積み重なる構造(“相対契約の集合”)。
    ・匿名組合員は対外責任を負わないが、氏名や商号の利用を許すと連帯責任が生じうるため(商法537条)契約条項とネーミング・開示実務を厳密に整える。

    2. 他ヴィークルとの法的差分(任意組合/LPSと比較)

    論点匿名組合(TK)任意組合(民法)LPS(投資事業有限責任組合)
    法源商法民法667条以下LPS法
    対外名義営業者名義組合名義(実務は業務執行組合員+組合員で開設)組合名義
    組合員の対外責任原則なし(表に出ない)原則無限有限/無限の峻別
    典型用途事業型・不動産・アセット運用の受け皿共同所有・共同事業VC/PE等
    会計・税務の基本形パススルー前提(構成員課税)パススルーパススルー

    (各法源:商法、民法、LPS法)

    3. 金商法との接続——登録・除外・「業」の解釈

    3.1 「ファンド」該当性と第二種/投資運用業

    資金拠出者から資金等を受け、出資先が事業を営み、その成果を分配する枠組みは、原則として集団投資スキームに該当します。自己募集(持分の勧誘)は第二種金融商品取引業の登録対象、運用(出資資産の再投資・有価証券等)は投資運用業の対象となるのが基本線です。

    実務上の誤解あるある
    「親子会社間の1対1だから無登録で良い」→公的見解・実務は厳格。証取法時代の“49名までOK”発想は現行法では通用しません(過去の事件・制度改正経緯、パブコメ参照)。金融庁

    3.2 何をもって「業」か(反復継続性・対公衆性)

    金融庁・財務局の審査実務は、形式的な回数論に依らず、対公衆性や実質を見ます。貸付型等の周辺法(貸金業・宅建業)を絡めた“除外論”で第二種/運用登録を回避するスキームは通りにくいのが実情です。登録・届出ガイドブックの解説も自己募集=第二種の原則を明確化しています。

    3.3 不動産型・受益権型の追加記載義務

    不動産信託受益権を主とする場合や、組合・TKで不動産受益権に投資する場合は、府令上の追加記載事項が課されます。売り手・運用者は開示様式のズレに注意が必要です。

    3.4 分別管理と口座名義

    第二種協会のQ&Aは、分別管理口座の名義(“営業者名+分別管理が分かる名義” 等)の考え方を具体化。TKでも分別管理の可視化が前提で、口座実務は他ヴィークルとの差が小さい局面が多いです。

    4. 使い分け、なぜTKが“デフォルト”なのか

    • 対外責任の遮断:営業者に外部表示と責任を集中でき、出資者の限定リスクを確保しやすい。
    • 事業型適合性:株式・デリバではなく事業収益を源泉とする多数案件で実装しやすい(不特法の共同所有設計を除く)。
    • 文書・口座・会計の運用容易性:分別管理の運用論が成熟。

    例外設計
    共同所有や権利安定性(共有登記)を重視する不特法の一部では、民法組合を採る合理性もあります。

    5. 税務の要点、区分・タイミング・源泉

    5.1 所得区分(個人)

    個人のTK分配は原則「雑所得」。ただし、重要な業務執行を実質担う場合は事業所得等へ振替え得るため、匿名性が崩れる設計は避けるべきです(所得税基本通達36・37共-21)。

    5.2 課税タイミング(法人)

    法人匿名組合員は、現実の分配がなくても、契約上の持分に応じて期末に損益認識します(法基通14-1-3)。キャッシュフローと税負担のミスマッチに注意。

    5.3 源泉徴収

    TK分配金には原則20.42%の源泉徴収がかかります(居住者は申告で精算、非居住者・外国法人はPEがない限りで源泉分離)——実務で広く定着した運用で、源泉漏れは営業者負担のリスク。

    実務チェック
    非居住者投資家に同意権・参加権を過度に付与するとPE認定リスクが上がるため、権限設計は慎重に。(PE判断は個別事実認定。投資家保護と課税関係のバランス設計が必要。)

    6. 「運用」か「事業投資」か、言い換えでは逃げられない

    契約書に「事業投資」と書いても、第三者に再投資して集団投資スキームの持分等を取得すれば、運用行為=投資運用業に該当し得ます。用語の言い換えではなく、実態で判定されるのが金商法の考え方です。

    7. 失敗しないTK設計チェックリスト(実務向け)

    1. ライセンス・スコープ:自己募集は第二種、再投資や受益権中心なら運用も視野。不動産・受益権は開示追加要件を確認。
    2. 匿名の保全:匿名組合員の名称使用禁止、同意権の付与はPE/所得区分に配慮。
    3. 分別管理口座名義の表記(営業者名+分別管理)と資産区分の証憑整備。
    4. 税務回り
       ・個人は原則雑所得、法人は期末認識
       ・源泉徴収20.42%の運用・体制(非居住者のPE判定を含む)をあらかじめ設計。
    5. 書面と開示:金商法・府令ベースの私募目論見書/契約締結前書面の整合。

    8. よくある誤解とプロの答え

    • Q:親会社100%にしか募集しないTKなら無登録で良い?
      A:原則NG。自己募集は第二種の射程。密接当事者でも対公衆性や反復性の実質で判断されます。
    • Q:TKだから投資運用業は不要?
      A:投資対象と実態で決まる。有価証券・受益権・デリバ等に再投資するなら運用業の該当可能性が高い。
    • Q:分配は源泉“不要”にできる?
      A:できません。源泉は支払者(営業者)の法的義務。漏れは営業者負担に波及。

    まとめ(結論)

    • TKは“二者間契約の集合”で外部責任を営業者に集中できるため、事業型ファンドのデフォルトとして強力です。
    • ただし、金商法の登録・開示・分別管理・税務が表裏一体。「ラベル」ではなく実態で当局は見ます。
    • 親密者間・1対1でも油断せず、第二種/運用の境界源泉徴収体制を初期設計に組み込むことが、最短距離です。