大量保有報告書の特例報告制度が「使えなくなる」実務上の分岐点
大量保有報告書における特例報告制度は、機関投資家にとって事務負担を軽減する重要な仕組みです。
もっとも、特例報告は無条件で認められる制度ではなく、投資目的・保有割合・共同保有関係といった要素のいずれかを誤ると、特例の前提を失い、通常の大量保有報告に切り替わることになります。
実務上問題となるのは、「5%を超えたかどうか」ではなく、どの時点で特例が使えなくなるのか、そしてその判断をどの単位で行うのかという点です。
本コラムでは、特例報告制度が使えなくなる代表的な分岐点を整理します。
1.特例報告制度は「機関投資家だから」使えるわけではない
特例報告制度は、一定の機関投資家にのみ認められていますが、
機関投資家であること自体が要件のすべてではありません。
制度上は、以下の要件をすべて満たしていることが前提です。
- 機関投資家に該当すること
- 投資目的が純投資であること
- 基準日を事前に届け出ていること
- 保有割合が10%以下であること
いずれか一つでも欠けると、特例報告は適用できません。
2.「純投資目的」の判断が最初の分岐点になる
特例報告制度の適用可否で、最も判断を誤りやすいのが投資目的です。
制度上、「純投資」とは、
- 発行者の事業活動に重大な変更を加える意図がないこと
- 重要提案行為等を行う目的がないこと
を前提としています。
たとえば、
- 株主総会での議決権行使方針について事前協議を行う
- 株主提案や経営関与を前提とした保有
といった行為が実態として認められる場合、形式上は純投資として届出ていても、特例報告の前提を欠くことになります。
3.保有割合10%超えは「即」特例失効となる
特例報告制度が認められるのは、保有割合が10%以下である場合に限られます。
この10%判定は、
- 株券だけでなく
- 潜在株式を含め
- 共同保有者分を合算したうえで
行われます。
そのため、
「現物株だけでは10%未満」
「自社単独では10%未満」
といった理由では、特例の継続は認められません。
10%を超えた時点で、その後は通常の大量保有報告として、日々の判定・提出が必要になります。
4.共同保有関係の発生が特例失効の引き金になることもある
特例報告制度の適用可否は、単独保有を前提に判断できるとは限りません。
たとえば、
- 親子会社・兄弟会社
- 夫婦
- 実質的に議決権行使を共同する関係
が認められる場合、共同保有者として合算されます。
結果として、
- 単体では10%未満
- 合算すると10%超
となり、特例報告が使えなくなるケースがあります。
5.実務上は「特例が使えるか」より「いつ使えなくなるか」を管理する
実務対応として重要なのは、
「特例報告制度を使っているかどうか」よりも、
- 投資目的に変化が生じていないか
- 共同保有関係が発生していないか
- 潜在株式を含めた保有割合が10%に近づいていないか
を継続的に管理できているかという点です。
特例報告は、条件を満たしている間だけ認められる例外的な制度であり、恒久的な権利ではありません。
まとめ
大量保有報告書の特例報告制度は、機関投資家にとって有用な制度である一方、
投資目的・保有割合・共同保有関係のいずれかを誤ると、容易に適用外となります。
特例が使えなくなる境界線を正確に把握し、
「特例前提の運用」から「通常報告への切替え」が必要なタイミングを見誤らないことが、実務上の重要ポイントといえます。
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