少人数私募債
「少人数私募債」という言葉は、企業経営者にとっては馴染み深いものかもしれません。簡単に言えば、これは社債を一部の人々に向けて募ることで、複雑な手続きを避けられるというものです。
この手法を用いる場合、発行会社は特定の人々に対して自社の社債を募ることができ、特別な手続きや許認可申請は不要です。ただし、相手が50人未満で、社債の総額が一口額面の50倍未満であること、また一部の譲渡制限を設けることなどが条件となります。
これらの条件を満たさない場合、例えば募集対象者が50人以上になる場合や、発行総額が大きい場合には、公的な手続きが必要となります。その場合、手続きの難易度が上がります。
また、特定のプロフェッショナルな投資家に対しては、プロ私募という別の制度があります。これは金融機関や機関投資家など、金融商品取引法で定義される特定の投資家を対象としたものです。これらの制度を活用することで、企業は資金調達を円滑に行うことが可能になります。
証券会社への販売依頼
企業が自身で社債を募らない場合、証券会社を通じて社債の募集を行うことも可能です。これは、証券会社が特定の規則に従いながら、企業の社債を投資家に向けて販売するというものです。
しかし、こうした販売活動は一定の厳格さを必要とします。過去の事件を教訓に、規則は徹底的な審査とモニタリングを証券会社に求めています。実際に、業界全体で事前の審査と事後のモニタリングが強化されている傾向にあります。
例えば、最近では、証券会社が社債を販売する際には、その発行時の審査と後のモニタリングに多くのリソースを投入することが求められています。これは、業者が社債の販売について責任を持つことを強制する動きと言えます。
これらの変化は、過去に大規模な粉飾決算が発覚した企業の例を見ると明らかです。その企業の証券会社は、最終的に裁判所から賠償責任を認められました。このような事例を踏まえると、証券会社が社債の販売に関与する際の厳格な規則は、現在の社会の動向と一致していると言えます。
通算規定と通算ルールの計算方法
社債を募るときには、「通算規定」という重要なルールがあります。これは社債をどれだけ募集し、どれだけの人にそれを勧めるかを制限するものです。このルールの具体的な内容は次の通りです。
- 1年以内に同じ種類の社債を募集し、その総額が1億円以上となった場合
- 発行日の3ヶ月前に同じ種類の社債を発行し、勧誘人数が50人以上、総額が1億円以上となった場合
- 勧誘日の1ヶ月前に同じ種類の社債の勧誘を行い、勧誘人数が50人以上、総額が1億円以上となった場合
これらの条件に当てはまると、有価証券届出書の提出が必要になります。ただし、「同じ種類の社債」は利率や返済期間、通貨が同じものを指します。
「勧誘」とは何か、というのは法律上明確に定義されていません。しかし、例えばインターネット上で募集を行うだけでも、それは1人に対する1つの勧誘とみなされる可能性があります。
通算規定は、利率や返済期間、通貨が同じ社債について3ヶ月で49人という制限があります。これは、同じ種類の社債に対してだけの制限で、異なる特性を持つ社債については独立して49人を数えることができます。
なお、社債を1億円以上発行する場合には、通常は有価証券届出書の提出が必要になります。ただし、これは50人以上に勧誘した場合で、同一の利率、返済期間、通貨の社債についてのみ適用されます。また、1億円以上を募集する場合には、特定の事項を告知する義務があります。
まとめ
- 規模と人数の制限
少人数私募債は、その名前が示すように、一定の規模と人数に制限があります。具体的には、特定の期間内(例えば、1年あるいは3ヶ月)に同じ種類の社債を発行し、その勧誘人数が50人未満、発行総額が1億円未満でなければなりません。
- 勧誘行為の定義
勧誘行為の範囲は広く、例えばインターネット上での募集も勧誘行為に含まれる可能性があります。そのため、この点に関しては注意が必要です。
- 有価証券届出書の提出と告知義務
少人数私募債の発行は、通常、有価証券届出書の提出が不要です。しかし、勧誘人数が50人以上になったり、発行総額が1億円を超えたりする場合は、有価証券届出書の提出が必要になることがあります。また、1億円以上を募集する場合には特定の事項を告知する義務があります。
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