特例業務の人数制限とは?ファンド設計で陥りやすい落とし穴を解説
特例業務における「49名ルール」とは?
適格機関投資家等特例業務を活用したファンドでは、出資者のうち「適格機関投資家」以外の投資家(=特例業務対象投資家)は、1ファンドあたり49名以下に制限されています。このルールは、少人数かつプロ向けの制度という制度趣旨に基づくものです。
「声掛け」ではなく「実際の出資者数」で判定される
株式の少人数私募(いわゆる49人ルール)は「勧誘の人数(声掛けベース)」で判定されますが、特例業務の場合は実際に出資した投資家の人数で判断されます。
たとえば、100人に案内しても、最終的に出資したのが49名以下であれば、適格機関投資家等特例業務の要件を満たします。
「ファンドの数を分ければ人数も倍にできる」は通用するか?
結論から言えば、条件次第で可・不可が分かれます。
【ケース1】
ファンドAとファンドBが異なる投資対象(別プロジェクト)であれば、それぞれ49名までの特例業務対象投資家を受け入れることが可能です。
【ケース2】
ファンドAとファンドBが同じ出資対象事業に投資する場合には、出資者人数を合算して49名以内に抑える必要があります。
特に、主として有価証券・デリバティブに投資するファンド(いわゆる15号業務)では、「同一の出資対象事業である限り、すべてのファンドを合算して49名以内」とされます。
「同一かどうか」の判定はどこで決まる?
金融庁からの明確な定義は存在しませんが、実務上は以下のような判断要素が使われています。
- 運用対象資産の中身(例:同じ株式/同じSPCへの投資など)
- ファンド運営者が同一であるか
- 募集資料の記載内容や契約書の構造
- 投資家が実質的に「同じリスク・リターン構造に出資」しているか
つまり、形式だけ変えても、実質が同一と見なされれば、人数は通算されます。
注意すべき「二層構造」のスキーム
いわゆる「ファンド・オブ・ファンズ(FoF)」形式で、上位ファンド(親ファンド)を通じて下位ファンド(子ファンド)に出資するケースも注意が必要です。
たとえば、以下のようなスキームは規制対象となる場合があります
- 子ファンド(SPCやTKなど)に50名以上が間接的に出資している
- 上位ファンドが匿名組合などで「一般投資家」を受け入れている
- 上下ファンドの運用主体が同じ、または実質的にコントロール関係にある
このような構造は、人数制限の潜脱とみなされるおそれがあります。
実務でありがちな落とし穴
- 人数のカウント方法を誤って「50名目」を受け入れてしまう
- 複数ファンドで出資者が重複しているのに合算しなかった
- 出資者が法人でも、背後に一般投資家がいるのに把握していない
- 契約締結時点でなく、「ヒアリング段階」で人数カウントを始めてしまう
こうした対応ミスが原因で、金融庁や財務局から報告命令・行政処分・届出拒否につながることもあります。
まとめ:人数管理は「制度設計の根幹」
適格機関投資家等特例業務において、人数制限は単なるテクニカルな話ではなく、制度適用の前提条件そのものです。「49名を超えたら即アウト」という明確なラインがある以上、実務上は出資の契約管理・台帳管理・記録保存を徹底する必要があります。
制度を正しく理解し、リスクのないスキーム設計を行うことが、信頼されるファンド運営の第一歩です。